好評開催中の「LOVE展:アートにみる愛のかたち」の出展アーティストやその作品を紹介してきた"1分でわかる「LOVE展」"も連載最終回となりました。最後を飾るのは、英国を代表する現代アーティスト、デミアン・ハーストの《無題》。展示室内でひと際目を引くピンクのハートは、一見かわいらしい愛のシンボルですが、そこにはハーストならではの皮肉が込められています。
「LOVE展」では、本連載でご紹介した以外にも数多くのアーティストの作品をご鑑賞いただけます。会期は9/1(日)まで。ぜひ森美術館へ足をお運びください。
1990年代のイギリス美術を代表するデミアン・ハースト。鮫や牛などの生物をホルマリン水溶液に漬けた立体作品のシリーズは彼のトレードマークとなっています。初期の作品では薬品や昆虫などをあるがままに提示する手法が用いられ、それらの多くは生や死を想起させます。
出品作《無題》(2000)は、ピンクに着彩されたカンヴァスに蝶が貼られています。カンヴァスのかたちは、イギリスでは一般的なハート型のバースデイ・カードを表しています。愛を込めて誕生日を祝うためのカードに、蝶の死が内包されていることは皮肉そのもの。このように、ハーストは悪い冗談交じりに、私たちに生と死について問いかけるのです。
<関連リンク>
・六本木ヒルズ・森美術館10周年記念展
「LOVE展:アートにみる愛のかたち-シャガールから草間彌生、初音ミクまで」
2013年4月26日(金)-9月1日(日)
・1分でわかる「LOVE展」~アーティスト&作品紹介
(1)ジェフ・クーンズ《聖なるハート》
(2)ゴウハル・ダシュティ「今日の生活と戦争」シリーズ
(3)ナン・ゴールディン「性的依存のバラッド」シリーズ
(4)ジョン・エヴァレット・ミレイ《声を聞かせて!》
(5)フリーダ・カーロ《私の祖父母、両親そして私(家系図)》
(6)ジャン・シャオガン《血縁:大家族》
(7)草間彌生《愛が呼んでいる》
(8)シルパ・グプタ《わたしもあなたの空の下に生きている》
(9)初音ミク《初音ミク:繋がる愛》
(10)アルフレド・ジャー《抱擁》
(11)ロバート・インディアナ《ラブ》 & ギムホンソック《ラブ》
(12)ソフィ・カル《どうか元気で》
(13)シャガール、マグリッド、フランシス・ピカビアらが描いた恋人たち
(14)トレイシー・エミン《あなたを愛すると誓うわ》
(15)デヴィッド・ホックニー《両親》
(16)デミアン・ハースト《無題》