現在、森美術館では六本木ヒルズ・森美術館10周年記念展「LOVE展:アートにみる愛のかたち」を開催しています。「愛」というテーマは古今東西のアーティストを魅了し、その諸相が作品の中に描かれてきました。本連載では、展覧会に登場する作品&アーティストの一部をご紹介していきます。
第2回に登場するのは、イラン出身のアーティスト、ゴウハル・ダシュティ。本展では、写真シリーズ「今日の生活と戦争」より4点が出展されています。
ゴウハル・ダシュティ
《今日の生活と戦争》
2008年
インクジェット・プリント
70×105cm
作家蔵
1980年、イラン・イラク戦争開戦の年にイランで生まれたゴウハル・ダシュティは、現代イランの生活や社会問題に焦点をあてながら写真や映像作品を中心に制作活動を行なっています。
本展では作家自身の戦争体験をもとに制作された写真シリーズ「今日の生活と戦争」(2008年)のうち4点を展示しています。
いずれも架空の若い夫婦の様子を描いていますが、その背後には戦車、有刺鉄線、防衛用の土囊など、戦争を象徴するものが混在しています。しかし、夫婦の顔に目立った表情はなく、淡々と生活する姿、こちらに向いたまっすぐな眼差し、そしてテレビ画面を見つめる横顔から、何事にも揺るがないふたりの絆と未来に対する強い意志を読みとることができ、母国に対する作家の客観的な視点が感じられます。
「今」という時代や戦後世代の若者の生き様に目を向けるダシュティは、現代イランにおける新しい夫婦の関係や愛のかたちを作品に表出させるのです。
<関連リンク>
・六本木ヒルズ・森美術館10周年記念展
「LOVE展:アートにみる愛のかたち-シャガールから草間彌生、初音ミクまで」
2013年4月26日(金)-9月1日(日)
・1分でわかる「LOVE展」~アーティスト&作品紹介
(1)ジェフ・クーンズ《聖なるハート》
(2)ゴウハル・ダシュティ「今日の生活と戦争」シリーズ
(3)ナン・ゴールディン「性的依存のバラッド」シリーズ
(4)ジョン・エヴァレット・ミレイ《声を聞かせて!》
(5)フリーダ・カーロ《私の祖父母、両親そして私(家系図)》
(6)ジャン・シャオガン《血縁:大家族》
(7)草間彌生《愛が呼んでいる》
(8)シルパ・グプタ《わたしもあなたの空の下に生きている》
(9)初音ミク《初音ミク:繋がる愛》
(10)アルフレド・ジャー《抱擁》
(11)ロバート・インディアナ《ラブ》 & ギムホンソック《ラブ》
(12)ソフィ・カル《どうか元気で》
(13)シャガール、マグリッド、フランシス・ピカビアらが描いた恋人たち
(14)トレイシー・エミン《あなたを愛すると誓うわ》
(15)デヴィッド・ホックニー《両親》
(16)デミアン・ハースト《無題》