展覧会

六本木ヒルズ・森美術館15周年記念展 建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの

世界が魅せられた日本建築、その本質に迫る!

2018.4.25(水)~ 9.17(月)


展示資料・作品リストはこちらよりダウンロードできます。(PDF/1,437KB)


1. 可能性としての木造

国土の70%が森林である日本が育んだ木の文化は、持続可能なシステムだと言えます。古代から木を活かす技術が発達し、大工棟梁に受け継がれてきた秘伝書や伝統建築にみられる木組は木の文化の証です。木造建築が見直されている今、日本の木造文化の技と思想、その未来の可能性について思考します。

隈 研吾
《梼原・木橋ミュージアム》
2010年
高知
撮影:太田拓実

2. 超越する美学

もののあはれ、無常、陰翳礼讃など、日本の美意識には超越的な姿勢があります。信じがたいほどの繊細さと大胆さが溶け合い、シンプルという言葉すら超えた表現は、木造にも打放しコンクリートにも通底する日本建築にも受け継がれる遺伝子のひとつです。

谷口吉生
《鈴木大拙館》
2011年
金沢
撮影:北嶋俊治

3. 安らかなる屋根

日本建築は屋根である、と言われます。屋根は雨や雪を遮り、深い軒により日光を味方にします。人間を守る機能性とともに、その曲線美、水平美は風景のなかで象徴性をたたえ、安心感を与えます。伝統的な日本建築の屋根が近現代の建築家にいかなるインスピレーションを与えてきたかを考察します。

三分一博志
《直島ホール》
2015年
香川
撮影:小川重雄

4. 建築としての工芸

建築は工芸の集積である――明治期に建築という概念が西洋から持ち込まれる以前の日本には、自然を抽象化する意匠のセンスと、高度な匠の技を駆使し、「部分」の集積が「全体」すなわち建築物をなす、成熟したものつくりがありました。このような工芸性は、遺伝子として近現代の建築にも脈々と流れています。

吉田五十八
《ロイヤルホテル メインラウンジ》
1973年
大阪
画像提供:株式会社竹中工務店

5. 連なる空間

20世紀に入り、日本建築が世界に伝えたのは、建築は必ずしも内外を壁で仕切らなくても成り立つこと、部屋の機能は固定されなくてもよいこと、豪華な装飾ではなく素材そのものの表現によって品位が保てることでした。実用性が見た目の美しさにもつながる、開かれた空間の理想像は今も日本建築に生き続けています。

丹下都市建築設計
《香川県庁舎》
1958年
香川
撮影:市川靖史
画像提供:香川県

6. 開かれた折衷

日本の伝統建築は、6世紀、仏教とともに伝来した技術や意匠に始まり、さまざまな文化の融合や変容を経て「日本らしさ」が形作られました。ここでは、明治期に大工棟梁が手掛けた擬洋風建築や、世界的な視座で日本建築を模索した伊東忠太の挑戦を紹介します。世界はそもそも折衷である、という日本の視点は、多文化主義の現代、未来に開かれた遺伝子だと言えるでしょう。

小林清親
《海運橋第一銀行雪中 平成の新版》
1876年(オリジナル)
錦絵
所蔵:清水建設

7. 集まって生きる形

日本における「公共」には、長屋、寺子屋など縁がつなぐ空間の伝統があります。ここでは、伝統的集落を実測した調査や雪害に苦しむ農村問題など、建築が社会に向き合った例を紹介します。現代社会における新たなコミュニティ形成の方法として、自然の恵みと災害に囲まれた日本の「集まって生きる形」への注目は高まっています。

猪熊 純、成瀬友梨
《LT城西》
2013年
名古屋
撮影:西川公朗

8. 発見された日本

「伝統」は見出されるものだとしたら、国外から発見された日本建築も、いま、あらためて考察すべき知の資産です。来日したフランク・ロイド・ライトやアントニン・レーモンドから、現在第一線で活躍する建築家まで、国外の建築家が創造的に捉えた日本像を紹介します。また、海外に建設され、国際的な評価を得た日本の建築も参照します。

フランク・ロイド・ライト
《帝国ホテル(正面中央部入口)》
1923年
東京
画像提供:帝国ホテル

9. 共生する自然

日本人は自然に畏怖の念を抱き、崇高なものとして信仰の対象としてきました。そうした自然観はどのように日本の建築に反映されてきたのでしょうか。建築を自然の一部と捉え、自然を素材のひとつとして建築をつくる。自然との境界をデザインする。建築に見る日本の自然観は未来へと紡がれます。

安藤忠雄
《水の教会(星野リゾート トマム)》
1988年
北海道
画像提供:星野リゾート トマム
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