出展作家
イ・ブル、ジャガンナート・パンダ、黒川紀章
本展のタイトル「見えない都市」は、イタロ・カルヴィーノの小説のタイトルを引用しています。この小説は、マルコ・ポーロが元の初代皇帝フビライ・ハンに対して、旅先で見聞した数々の驚くべき都市の様相について語るフィクションです。
人間は常に理想の社会を思い描いてきました。建築や都市は、そうした夢の一部が現出したものだと言えます。しかし、現実には、建築や都市は災害により崩壊し、時を経て廃墟化し、いつかは遺跡となる可能性を孕んでいます。すなわち理想の社会とは、実現されないからこそユートピアであり続けるとも言えるでしょう。さらにインターネットによるコミュニケーションが一般化した現代においては、建築や都市は物理的な空間を超えてネットワーク状に生成され、従来の概念では捉えきれない存在になりつつあるともいえます。
ロシア・アヴァンギャルドを彷彿とさせつつも、エスペラント語の言葉がネオンとして輝くユートピア建築のようなイ・ブルの《朝の曲》。急速なグローバリゼーションの中で、高層のハイテク建築が神話や動植物と一体化し、新種の生命体となった都市を表現するジャガンナート・パンダの《叙事詩 Ⅲ》。建設から5年足らずで撤去されるという儚い運命をたどった、黒川紀章のメタボリズム建築《山形ハワイドリームランド》。本展で紹介するこれら3 つの作品は、人間の理想と夢の軌跡としての建築や都市について、観る者に考察を促す機会を与えてくれることでしょう。