仮想空間と現実世界が接続し、人工知能(AI)が飛躍的に発展するなか、新しいテクノロジーは私たちの日常生活に急速に浸透し、とりわけコロナ禍は仮想空間における活動を加速させました。また、顧みればテクノロジーとアートは、コンピューター・アート、ビデオ・アートなどの歴史のなかで常に併走してきました。近年のビデオゲームやAIの発展がアーティストの創造活動に全く新しい可能性をもたらす一方で、生成AIの登場は、人類の創造力にとっての脅威ともなっています。こうした動向は、現代アートの文脈においても大きく注目されています。
本展では、ゲームエンジン(※1)、AI、仮想現実(VR)、さらには人間の創造性を超え得る生成AIなどのテクノロジーを採用した現代アート約50点を紹介します。そこではデジタル空間上のさまざまなデータが素材となった全く新しい美学やイメージメイキング(図像や画像を作ること)の手法、アバターやキャラクターなどジェンダーや人種という現実社会のアイデンティティからの解放、超現実的な風景の可視化、といった特性が見られます。ただ、これら新しい方法を採用しながら、アーティストの表現の根幹では普遍的な死生観や生命、倫理の問題、現代世界が抱える環境問題、歴史解釈、多様性といった課題が掘り下げられています。
「マシン」とアーティストが協働する作品や没入型の空間体験は、「ラブ(愛情)」、共感、高揚感、恐れ、不安など私たちの感情をおおいに揺さぶるでしょう。現実と仮想空間が入り混じる本展は、人類とテクノロジーの関係を考えるプラットフォームとして、不確実な未来をより良く生きる方法をともに想像する機会となるでしょう。
※1 コンピューター・ゲーム制作に必要な機能をまとめたソフトウェアをさす。
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マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート
主催 | 森美術館 |
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助成 | 公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【ライフウィズアート助成】(採択団体:森ビル株式会社) 文心藝術基金會 台湾文化部、台北駐日経済文化代表処台湾文化センター 洪建全基金會 デンマーク芸術財団 |
協賛 | アンソロピック 楽天グループ株式会社 株式会社メルコグループ 株式会社大林組 Sakana AI |
個人協賛 | James Yi-Rong, Hsu Katrina Lake |
後援 | J-WAVE |
企画 | 片岡真実(森美術館館長) マーティン・ゲルマン(森美術館アジャンクト・キュレーター) 矢作 学(森美術館アソシエイト・キュレーター) |
アドバイザー | 畠中 実(NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]主任学芸員) 谷口暁彦(メディア・アーティスト) |