展覧会名の「マシン・ラブ」について
タイトルにある「マシン」は産業革命以降の重工業的な機械ではなく、コンピューターやハードウェアの総称としての「マシン」を意味します。20世紀初頭には機械のスピード感やダイナミズムが象徴する新たな時代を「マシン・エイジ」と呼び、多様な芸術分野で支持されましたが、本展では21世紀に発展したコンピューターやインターネットに深く関わる新しい「マシン」時代のアートに注目します。「ラブ」は、愛情、妬み、恐れ、高揚感など、ゲームやマシンに向けられる熱狂的な感情を連想させます。さらには、AIの発達した未来には、ロボットやアンドロイド、サイボーグなどが感情や意識を持つ主体となり得るのか、という哲学的な問いでもあります。
本展の特徴とみどころ
さまざまな領域の専門性が集結し、新しい世界を表現
現代アートに限らず、デザイン、ゲーム、AI研究などの領域で高く評価されるアーティスト、クリエイター12組が、生物学、地質学、哲学、音楽、ダンス、プログラミングなどの領域とのコラボレーションをとおして制作した作品を一堂に集めて紹介します。
デジタルとリアルが融合した世界を体験
アニカ・イの絵画やアドリアン・ビシャル・ロハスの彫刻など、見た目では非デジタルな作品の制作過程にもさまざまなテクノロジーが使われています。一方で、ルー・ヤンやヤコブ・クスク・ステンセンは、デジタル映像作品と、そのなかに描かれた風景の一部やオブジェクトを現実空間にも出現させるインスタレーションを展開します。展覧会を鑑賞するなかで、デジタル空間とリアル空間がひとつに連なるような感覚を体験できます。
アートやメディア・アートのプライズの受賞者多数
キム・アヨンは《デリバリー・ダンサーズ・スフィア》(2022年)で、メディア・アート界の世界的な賞である、アルス・エレクトロニカ賞のニュー・アニメーション・アート部門で2023年にゴールデン・ニカ賞(グランプリ)を受賞、2024年には国立アジア文化殿堂(ACC)の第一回フューチャー・プライズを受賞しました。ルー・ヤンは2022年のドイツ銀行グループアーティスト・オブ・ザ・イヤーを、シュウ・ジャウェイは2024年のアイ・アート&フィルム・プライズ(アムステルダム、アイ・フィルム・ミュージアム)を、そして、ケイト・クロフォードとヴラダン・ヨレルは《帝国の計算:テクノロジーと権力の系譜 1500年以降》(2023年)で、アルス・エレクトロニカ賞の中でもメディア・アートに革新をもたらしたアーティストを表彰するS+T+ARTSのグランプリを受賞しています。
インタラクティブな作品に観客が参加。インディー・ゲームセンターも
キム・アヨンの《デリバリー・ダンサーズ・スフィア》のゲーム版や、AIキャラクターとの対話に挑戦できる(※1)ディムートの《エル・トゥルコ/リビングシアター》(2024年)などインタラクティブな作品に参加できます。また、インディー・ゲームセンター(※2)では、メディア・アーティストであり、本展アドバイザーである谷口暁彦が「私と他者」の二者の関係性をテーマにゲームをセレクトします。初心者でも楽しめるゲームを、来場者同士で実際にプレイすることができます。
※1 参加できるタイミングについてはこちらをご覧ください。
※2 インディー・ゲーム(indie game):個人または少人数の開発者が作った、メジャーなゲームにはない実験志向の強いゲーム。
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《ダミー・ライフ #38》
2025年
インクジェットプリント
26.6×40.0 cm
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《ダミー・ライフ #38》
2025年
インクジェットプリント
26.6×40.0 cm