「フレンチ・ウィンドウ展」の出展アーティストに4つの質問を行い、マルセル・デュシャンやコレクターの存在について聞いた連載も第6回目。今回は、蝋人形のような人物ポートレートの作品が本展でも印象的なヴァレリー・ベランです。マルセル・デュシャン賞が、国際的な活躍のきっかけになったと言います。
■Profile
1964年ブローニュ=ビヤンクール生まれ。パリで活動中。近年の主な個展に、2008年「オルセー美術館の現代アート コレスポンダンス、ヴァレリー・ベラン/エドゥアール・マネ」オルセー美術館(パリ)、「ヴァレリー・ベラン回顧展」エリゼ美術館(ローザンヌ、スイス)、2009年「ヴァレリー・ベラン:メイド・アップ」ピーボディ・エセックス博物館(セーラム、米国)などがある。
A.私にとってマルセル・デュシャンとは、アートの制作につながる工芸と労働という2つの考えから、アートを解放することに成功したアーティストです。
レディメイドは自由への探求の結果であり、デュシャンは、アーティストはまず自由であるということを私に常に思い出させる存在です。同時に"怠惰な謝罪"は彼が受けた伝統的な教育によるものです。これらの二つの要素が、作品の造形を豊かに、そして複雑にしています。
「レディメイドは、デュシャンによって本質的な美と力を呼び起こすために選ばれています。」私はひとりのアーティストとして、自分の作品を、この美の探求、プラトン的な意味におけるイデアの探求として位置づけようと試みています。
A.初めてパリのギャラリーで展覧会を開催してから10年後の2004年、私はこの賞の候補に上がりました。
この賞は、私のアートに対するある種の認識のようなもので、大きな励みでもありました。この賞は、賞賛と注目を呼び起こし、私が国際的なコラボレーションをはじめる手助けになりました。
A.アーティストの生活とキャリアを語るうえで、コレクターは非常に重要な存在です。彼らは経済的にも知的にも、多様な面で私たちを支援し、美術館やインスティテューションにおいてアーティストの名前を保証してくれるのです。
A.イギリス系ドイツ人アーティストのティノ・セーガル。
彼が「構成されたシチュエーション"constructed situations"」と呼ぶ作品では、彼の考えた指示をひとり或いは複数の人々を巻き込んで実行します。セーガルは、指示書、領収書、カタログ、写真などは存在しないとしています。つまり彼の作品はいかなる方法でも記録されないのです。
■「フレンチ・ウィンドウ展」に出展した主な作品
《Untitled, from the series Modeles II》
2006
Courtesy: Galerie Jérôme de Noirmont, Paris
<関連リンク>
・フレンチ・ウィンドウ展 アーティストに聞きました。「あなたにとって、マルセル・デュシャンとは?」
File01. マチュー・メルシエ
File02. ピエール・アルドゥヴァン
File03. トーマス・ヒルシュホーン
File04. カミーユ・アンロ
File05. クロード・クロスキー
File06. ヴァレリー・ベラン
File07. フィリップ・マヨー
・「フレンチ・ウィンドウ展:デュシャン賞にみるフランス現代美術の最前線」
・森美術館flickr(フリッカー)
展示風景「フレンチ・ウィンドウ展:デュシャン賞にみるフランス現代美術の最前線」
展示風景「フレンチ・ウィンドウ展:デュシャン賞にみるフランス現代美術の最前線」(2)