森美術館で2011年に開催され、好評を博した「メタボリズムの未来都市展」が、現在、台湾の台北市で開催されています。当館企画の展覧会が台湾で開催されるのはこれが初めてです。
「代謝派未来都市展:當代日本建築的源流」エントランス外観
左は平田晃久《発酵》、右は吉村靖孝《WHEREVER GREEN》。
すでに森美術館での展示を見てご存知の方も多いと思いますが、「メタボリズム」は、生物学用語で「新陳代謝」を意味し、生物が代謝を繰り返しながら成長していくように建築や都市も有機的に変化できるようデザインされるべきである、という建築理論のマニフェストとして、戦災からの復興やその後の高度経済成長期を背景に、1960年代に日本で起こった建築運動です。
今回の巡回展は、森美術館と忠泰建築文化基金会とが共同で主催するもので、同基金会が運営する「中山創意基地(Chun Shang Creative Hub)」において2013年11月3日まで開催されます。規模は東京展よりもやや縮小されていますが、メタボリズムのエッセンスを伝える模型・資料・写真・映像など、展示作品約300点以上が展覧されています。台北展ではメタボリズム運動を日本の現代建築の源流と位置付け、「代謝派未来都市展:當代日本建築的源流」というタイトルが付けられました(「メタボリズム」は、中国語では「代謝派」となります)。
「代謝派未来都市展:當代日本建築的源流」展示風景
「代謝派未来都市展:當代日本建築的源流」展示風景
本展の開催に合わせ、施設の建物のファサードは、大阪万博の「お祭り広場」と「太陽の塔」の断面図を使って装飾され、前庭には平田晃久氏や吉村靖孝氏による建築インスタレーションも設置されて、展示室の外からも展覧会を盛り上げています。
また、本展の開催に合わせて、中山創意基地ではレクチャーシリーズを企画しており、槇文彦氏と團紀彦氏との対談、磯崎新氏と青木淳氏との対談、レム・コールハース氏、平田晃久氏、吉村靖孝氏の講演が行なわれます。これから秋に掛けて、台湾にお出掛けの機会があれば、「メタボリズム展」にぜひお立ち寄りください。
森美術館は「メタボリズム展」の他にも、現在、「アイ・ウェイウェイ展」を北米5会場(ワシントン、インディアナポリス、トロント、マイアミ、ニューヨーク)に巡回させているほか、香港の政府系機関である香港芸術発展局と提携し、短期の研修生を受け入れるインターンシップ制度を設けるなど、国際的に活動を展開しています。日本、そしてアジアをリードする国際的な現代美術館として、この秋開館10周年を迎える森美術館の活動に今後もご期待ください。
文:土屋隆英(森美術館学芸グループ インターナショナル・プログラム マネジャー)
<関連リンク>
・「メタボリズムの未来都市展:戦後日本・今甦る復興の夢とビジョン」
会期:2011年9月17日(土)~2012年1月15日(日)
・「メタボリズムの未来都市展」バーチャル鑑賞ツアー
(1)「メタボリズム」ってなあに
(2)「Sec 1メタボリズムの誕生」では《広島ピースセンター》《農村都市計画》が見どころ!
(3)「Sec 2メタボリズムの時代」では《中銀カプセルタワー》に注目!
(4)「Sec 3:空間から環境へ」では《大阪万博》を。「Sec 4:グローバル・メタボリズム」では《スコピエ都心部再建計画》をチェック!