本展のSection1は、「メタボリズムの誕生」がテーマ。戦中・戦後からメタボリズムの誕生までの流れを取り上げています。その中から、丹下健三の広島ピースセンター、黒川紀章の農村都市計画をみどころとしてご紹介します。
丹下健三《広島ピースセンター》
1953年 撮影:石元泰博
■広島ピースセンター (丹下健三)
戦後の復興にメタボリズムの思想が生かされた事例です。今後100年、ぺんぺん草一本生えないと言われた広島は、その後見事な復興を成し遂げました。その復興計画の中心となったのが、丹下健三による広島平和記念公園です。平和祈念資料館本館は、戦後建築物では初の重要文化財指定となっています。世界遺産となった原爆ドームも当初、崩壊の恐れがあることから解体も検討されていましたが、それを保存時ランドマークとしました。4キロにわたる資料館、慰霊碑、ドームを1本の軸に置くことで、平和の祈りを象徴する都市への生まれ変わりのきっかけとなりました。
黒川紀章《 農村都市計画 》(実現せず) 1960年
■農村都市計画 (黒川紀章)
1959年、紀伊半島から東海地方を中心に莫大な被害が出た伊勢湾台風。黒川紀章の故郷である愛知県蟹江町も壊滅的な被害を受けました。当時まだ東大大学院の丹下研究室に在籍中の黒川は大変なショックを受け、その復興計画を翌年開催された世界デザイン会議において発表しました。地表部分は今まで通り農産物を生産しますが、住居などの建築施設は、何とすべて空中に持ち上げるという斬新なアイデア。格子状になっているのは歩道で、それに沿って住居が建てられ、また近隣都市から農地へ通勤するという新しいライフスタイルも提案しています。このような低地田園地帯の新しい発想による有効活用は、今回の震災でも改めて見直されるべき点ではないでしょうか。
Section1 MAP
<関連リンク>
・「メタボリズムの未来都市展」バーチャル鑑賞ツアー
(1)「メタボリズム」ってなあに
(2)「Sec 1メタボリズムの誕生」では《広島ピースセンター》《農村都市計画》が見どころ!
(3)「Sec 2メタボリズムの時代」では《中銀カプセルタワー》に注目!
(4)「Sec 3:空間から環境へ」では《大阪万博》を。「Sec 4:グローバル・メタボリズム」では《スコピエ都心部再建計画》をチェック!
・「メタボリズムの未来都市展:戦後日本・今甦る復興の夢とビジョン」
会期:2011年9月17日(土)~2012年1月15日(日)