2010年6月16日(水)

クロッシング・プライズ 受賞者決定!


授賞式に出席した受賞アーティストと審査員、撮影:御厨慎一郎

現在開催中「六本木クロッシング2010展」に関連して6月13日(日)に「クロッシング・プライズ」 授賞式で、結果が発表されました!
鑑賞者の皆様の投票による「オーディエンス賞」を照屋勇賢さん、森美術館館長と理事会メンバーが選考する「MAM (マム)賞」を青山悟さん、多様なジャンルで活躍する特別審査員が選ぶ「特別賞」をChim↑Pom加藤翼さん宇治野宗輝さん、に授与しました。
尚、今回の特別審査員には、俳優の伊勢谷友介さん、建築家の隈研吾さん、キャスターの八木亜希子さんを迎えました。ブログでは結果発表とともに、受賞作家と審査員から届いたコメントをご紹介します。

<オーディエンス賞>※鑑賞者の投票により決定。
受賞者:照屋勇賢


《告知--森》2005 年 紙袋、糊 9.3×15×27.5cm 所蔵:オオタファインアーツ、東京 撮影:木奥恵三

照屋勇賢の展示作品は、紙袋やトイレットペーパーの芯といった日用品を使って精巧に制作されたものである。また、それらは環境問題や「沖縄」といった社会の事象について私たちに一考を促すとともに、紙にいまだ宿る木の生命力、という独自の想像力もその背後にはある。このように、技巧力、社会性、想像力という3つを兼ね備え た作品の強さがオーディエンスに伝わり、受賞につながったのではないかと思われる。来館者が熱心に照屋の作品を写真撮影する姿が頻繁に見られたことも、その人気の高さを表していた。
―近藤健一(森美術館アソシエイト・キュレーター)

受賞者コメント
マックや免税店からの袋、ピザ箱、トイレットペーパー、ひっくり返った日の丸まで、どれも沖縄から生まれてきた作品です。そして、どれも東京にもあります。等身大にみてくれたら、きっと沖縄の自然も、東京の道ばたからみえてくるんだという、オーディエンスからのお返事をこの賞でもらえました。

※照屋さんによる作品解説はこちらもご覧ください。

<MAM 賞>
受賞者:青山 悟
審査員:飯田高誉(京都造形芸術大学客員教授/森美術館理事)、市原研太郎(美術評論家/森美術館理事)、山下裕二(明治学院大学教授/森美術館理事)、南條史生(森美術館館長)


《Glitter Pieces #1》2008 年 ポリエステルにメタリック糸と黒糸で刺繍 17.4x23.2cm個人蔵 Photo: Miyajima Kei Courtesy: Mizuma Art Gallery, Tokyo

青山悟は、長年、刺繍を表現方法に用いて制作してきたアーティストである。彼は、きわめて集中力を要し、長い時間のかかるこの技法を、あたかも油彩のように柔軟に使いこなし、細密であると同時に伸びやかな表現を可能にしている。
今回のシリーズは、社会的な事件を描いた新聞や雑誌の記事写真をその主題に取り上げ、明快なテーマ性を打ち出している。そして、手作業についてのウイリアム・モリスの言葉を引用し、また社会主義のマニフェストを引用することによって、手仕事を用いた労働の意味を、自己言及的に再定義しようとしている。青山がこのようなスタンスで、商業的、資本主義的なシステムに対し、批判的なコメントを発信し、内省的であると同時に概念的なアプローチを可能にしたことが、今回、審査員の高い評価となった。
―南條史生(森美術館館長)

受賞者コメント
「芸術は可能か?」という深刻な問題を掲げる展覧会での受賞に、大きな意義を感じております。展覧会前も会期中もずっと自問していました。これからもずっと問い続けていくと思います。展示に関わってくださった皆さん、本当にどうもありがとうございました!

※青山さんによる作品解説はこちら

<特別賞 伊勢谷友介 選>
受賞者:Chim ↑ Pom


《SHOW CAKE, xxxx!!》2010 年 インスタレーション サイズ可変 「六本木クロッシング2010 展:芸術は可能か?」展示風景 撮影:木奥恵三 Courtesy: Mujin-to Production, Tokyo

地球上における様々な変化は、"表現者"にとってもテーマとなってきました。現代においても同様で、現実は時に残酷でありながら、私達の目を覚ましてくれる。
Chim↑Pomさんのパフォーマンスは、その"傷ついた部分"を鋭く刺しながらも、見る側に、いとも簡単に現実に飛び込ませてくれる"ポップ"さがカッコイイ。しかし、同時にそのポップさは彼らの作品を、ますます鋭くして私達にみせてくれていると思います。これからの未来の僕らに、何を見せてくれるのか楽しみです!!!
―伊勢谷友介(俳優)

受賞者コメント
伊勢谷友介君!誇れる出来事が私達に起きました。この現代で最高にCool でHot なArtist の彼が、Chim↑Pom を選んで下さった事は本当に名誉で嬉しいです。ありがとう! お互いの更なる大成功と幸せを祝して、乾杯!!xxx

<特別賞 隈 研吾 選>
受賞者:加藤 翼


《H.H.H.H.( ホーム・ホテルズ・ハルニャン・ハウス)》 2008 年 ラワンベニヤ、OSB、赤松垂木、SPF、虎ロープ  895x526x493cm パフォーマンス風景:上野恩賜公園、東京

建築という存在自体が、今どのような危機的状況にあるかを、この作品はものの見事に顕在化している。建設することに意味があるわけではなく、ひきたおすこと、こわすこと自体に意味があるということを、この作品はものの見事に顕在化した。建築をつくるということの、肉体的な快楽から我々が排除された今、それを補うようにして建築をひきたおし、またよみがえらせるということの身体的快楽に我々が芽生えつつあることもこの作品は教えてくれる。
―隈 研吾(建築家)

受賞者コメント
この度、特別賞を受賞させて頂き大変光栄です。これまで共に作品制作をしてきた仲間、家族、友人やその他大勢の人たち、ありがとう!!! これからも一つ一つの発表の場と友愛の精神、未だ見ぬ出会いを大切に「グッ」とくる作品をつくってまいります。

<特別賞 八木亜希子 選>
受賞者:宇治野宗輝


《THE BALLAD OF EXTENDED BACKYARD》部分 2010 年 日産セドリックバン、木製家具、家電機器、ミクスト・メディアサイズ可変 「六本木クロッシング2010 展:芸術は可能か?」展示風景 撮影:木奥恵三

宇治野さんの作品は、まずとにかく楽しかった。思わず足を止めて、しばし物たちの演奏に聴き入らずにはいられませんでした。この作品は、大量生産され短いサイクルで使い捨てられる物もまた誰かの生み出した物であり芸術作品に成りうるという事、その土地に売られている中古品を組み合わせる事で同じように見える物からも地域性を出しうるという事を、気づかせてくれました。芸術=独自の視点、独自の表現を生み出す事は、いつでもどこでも何においても可能なのだという事を楽しく魅せつけていただきました。元気になりました。
―八木亜希子(キャスター)

受賞者コメント
受賞の連絡をいただき、思いがけなく、とても嬉しく思います。ご協力いただいた多くの皆様に大変感謝しております。今回の展示は、私にとって日本の美術館で初めての展示で、かつ、今は大きく世界の価値観の変わるタイミングでもあり、これまで行ってきた物質を通した20 世紀後半の近代化の調査を、現在に生きる作品として発表すべく、緊張して望みました。引き続き未来に向けて、気持ちを引き締めています。

また、プライズ授賞式当日の模様は、USTREAMによりライブ動画を配信しました。こちらもぜひチェックしてみてください。

<関連リンク>

<関連リンク>
六本木クロッシング2010展:アーティストメッセージ

・照屋勇賢アーティストトーク
前編:紙袋が「いまも木である」と告げている
後編:封鎖された事件現場にも入れた、ピザ配達

・「青山悟×MAMCメンバー」限定フリートーク
前編:労働とは何か。アート制作という労働を通して考える
後編:スピーディな機械を使って、敢えてスローダウン

宇治野宗輝も参加!J-WAVEとコラボイベント開催

・キュレーターインタビュー:2010年の日本、「芸術は可能か?」
第3回「不完全の映像美」八幡亜樹さんと「一体感アート」加藤翼さん
第4回 「路上発」HITOTZUKIと「変換アート」宇治野宗輝さん

「六本木クロッシング2010展:芸術は可能か?」
会期:2010年3月20日(土)~7月4日(日)

カテゴリー:03.活動レポート
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