シアスター・ゲイツ メッセージ
私にとって日本の民藝運動は、民衆が生み出すものに美を見出し、礼賛するというメカニズムを理解するうえで、20年以上にわたり大事な道しるべとなってきました。米国におけるブラック・パワー運動、黒人解放運動と同様、民藝運動は、西洋文明が瞬く間に侵食してくるなか、極めて特有な伝統や歴史を大切に守り継ごうとしました。もちろん両者ともに盲点や偏り、さらには否定的な意見を抱えていたわけですが、共通していたのは、地域性を称え、美への意識を高め、文化の力を尊ぶ、揺るぎない態度でした。「アフロ民藝」とは、私の芸術の旅路においてこの2つの最も重要な運動を融合させる試みなのです。
シアスター・ゲイツ略歴
1973年、米国イリノイ州シカゴ生まれ、同地在住。アイオワ州立大学と南アフリカのケープタウン大学で都市デザイン、陶芸、宗教学、視覚芸術を学ぶ。土という素材、客体性(鑑賞者との関係性)、空間と物質性などの視覚芸術理論を用いて、ブラックネス(黒人であること)の複雑さを巧みに表現している。2004年、愛知県常滑市「とこなめ国際やきものホームステイ」(IWCAT)への参加を機に、現在まで20年にわたり常滑市の陶磁器の文化的価値と伝統に敬意と強い関心を持ち、陶芸家や地域の人々と関係を築いてきた。近年の主な個展に、ニュー・ミュージアム(ニューヨーク、2022-2023年)、サーペンタイン・パビリオン(ロンドン、2022年)、ホワイトチャペル・ギャラリー(ロンドン、2021年)、ウォーカー・アート・センター(ミネアポリス、2019-2020年)、マルティン・グロピウス・バウ(ベルリン、2019年)、パレ・ド・トーキョー(パリ、2019年)、プラダ財団(ミラノ、2018年)などがある。日本では、国際芸術祭「あいち2022」に出展、2019年には公益財団法人大林財団「都市のヴィジョン」の助成対象者として選出され、国内でリサーチプロジェクトを実施した。