展覧会

ASEAN設立50周年記念 サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで

ASEAN10ヵ国86組のアーティストが大集結! 国立新美術館と2館同時開催

2017.7.5(水)~ 10.23(月)

  • NACT 国立新美術館で展示
  • MAM 森美術館で展示

うつろう世界
NACT

世界のいかなる地域や時代においても、地図には政治的、経済的に多様な価値観や視点が織り込まれています。アーティストが描き出す地図は、単に地理的な特徴を記すのではなく、東南アジアの複雑な歴史と空間を表しています。本セクションでは、異なる視点から土地とその意味を見つめる複層的な地図、人々の移動を記録することで記憶を呼び起こす地図、理想的な社会を求めた想像上の地図などをとおして、東南アジアという空間を考えます。

イー・イラン (b.1971) マレーシア
《うつろう世界》 (「偉人」シリーズより) 2010年
ミマキデジタル・インクジェット・プリント、酸性染料、ろうけつ・藍染め、絹 140.5×298 cm
Courtesy: Silverlens Galleries, Makati, The Philippines

情熱と革命
NACT

東南アジア諸国の多くは、第二次世界大戦後の1940年代から80年代まで、植民地支配からの独立が続きました。その間、独立戦争、インドシナ戦争、ベトナム戦争、カンボジア内戦などが起こり、一方では芸術表現への抑圧や弾圧が続いた国も見られました。そうした環境のなかで、多くのアーティストは民主化や表現の自由、言論の自由に向けた活動を行ってきました。本セクションでは、こうした時代をリアルタイムで体験したアーティストの作品を中心に紹介します。

ティン・リン (b.1966) ミャンマー
《アートの生物学》(「00235」シリーズより) 1999年
ミクストメディア、綿のシャツ 53×53 cm
Courtesy: Martin LeSanto-Smith

アーカイブ
NACT

近年、インターネットの発達によって、それまで発見や入手が困難だった情報へのアクセスが容易になり、それを起点にした調査研究をもとに、美術資料をアーカイブ化しようとする動きが見られます。東南アジアでも、各地で蓄積されてきた資料が公開されつつあり、その一方で美術資料そのものを素材として作品化するアーティストも増えてきました。本セクションでは、そのうちシンガポールのザ・アーティスト・ビレッジ(TAV)の活動を総覧できるコウ・グワンハウの「シンガポール・アート・アーカイブ・プロジェクト」(2007年)をはじめ、いくつかの例を紹介します。

コウ・グワンハウ (b.1963) シンガポール
《シュ・ティエシェン――アーカイブから見る作家の100年》 2014年
南洋理工大学CCAレジデンシー・スタジオ(シンガポール)の印刷物、資料現物 サイズ可変
所蔵:シュ・ティエシェン&シンガポール・アート・アーカイブ・プロジェクト
撮影: Koh Nguang How

さまざまなアイデンティティー
NACT

脱植民地主義の時代に入り、独立や民主化が人々にもたらしたのは、新しい国家としてのアイデンティティー、民族としてのアイデンティティー、個人としてのアイデンティティーなど、自らを成り立たせているアイデンティティーとは何か、という問いでした。この複雑な問いは、冷戦構造が終焉を迎えた1989年以降、それまでのイデオロギーに替わる新しい価値の基軸を求める世界各地で共有されたものでもありました。この時期に制作された現代美術の作品には、さまざまなレベルでアイデンティティーを問うものが多く見られましたが、これは今日もなお複雑な課題として継承されています。

リー・ウェン (b.1957) シンガポール
《奇妙な果実》
2003年
Cプリント
42×59.4 cm(各、12点組)
作家蔵
ムラティ・スルヨダルモ (b.1969) インドネシア
《アムネシア》 2016年
パフォーマンスとインスタレーション
ミシン、綿、チョーク、木 サイズ可変
パフォーマンス:5時間
パフォーマンス風景:アーク・ギャルリ、ジョグジャカルタ、インドネシア、2016年

日々の生活
NACT

1990年代以降、多くのアーティストが毎日の暮らしや日常に目を向け始めました。国際的にもグローバル化や多文化主義が拡がり、世界各地それぞれの平凡な日常のなかに文化的、社会的、歴史的文脈を見出し作品化することが、新しい世代の表現として注目されたのです。そこでは、家族との思い出、毎日の食事や遊び、路上での多様な営みが、絵画、写真、映像、インスタレーションなどのメディアをとおして現代美術の文脈に持ち込まれました。同時期、世界各地で急速に拡張した国際展では、新しい世代のアーティストが注目され、東南アジアのアーティストも世界へ活躍の場をひろげていきました。

スラシー・クソンウォン (b.1965) タイ
《黄金の亡霊(現実に呼ばれて、私は目覚めた)》 2014年
金のネックレス、工業用毛糸、ネオン管、鏡、写真、他 サイズ可変
パフォーマンス風景:台北ビエンナーレ 2014
©2017 Surasi Kusolwong

発展とその影
MAM

総人口6億人を超えるASEANは、世界的にも今後の成長が期待されており、自由貿易によって生まれる巨大市場に海外資本も注目しています。成長率は国によって異なりますが、高度経済成長とそれに伴う開発は、都市部の景観を急速に変え、人々の生活にも劇的な変化を及ぼしています。その影で社会には格差が生まれ、伝統的な文化が喪失されることへの懸念もあります。アーティストは、しばしばそうした変化を批評的に見つめています。

ジョンペット・クスウィダナント (b.1976) インドネシア
《言葉と動きの可能性》 2013年
原動機のないモーターバイク、旗 サイズ可変
所蔵:森美術館、東京

アートとは何か?なぜやるのか?
MAM

公的な美術館など現代美術のための制度が発展途上にある東南アジアでは、創造活動の目的も現代美術を取り囲む制度内での成功に限定されていません。むしろ、若い世代のアーティストのなかには、環境問題や離散する地域社会などコミュニティーのさまざまな課題へ向けてアートに何ができるのかを問う姿勢が顕著に見られます。コミュニティーに介入し、一般の人たちの参加を求めるソーシャリー・エンゲイジド・アートの実践や、コレクティブ(集団)としての活動は、日本よりも色濃く見られる特徴のひとつと言えるでしょう。

アイ・コー/ニュー・ゼロ (b.1963/2008~) ミャンマー
《村の美術学校》 2015年~

瞑想としてのメディア
MAM

東南アジア諸国では多様な民族、言語、文化、宗教が共存しており、そこで継承されている年中行事や祭祀は、成長や開発が進む今日においても日々の暮らしに密接に関係し、現世だけでなく死後の世界や超自然界に向けられた関心などにも繋がっています。本セクションでは、古来の自然信仰から特定の宗教まで、より幅広い神秘的で崇高な世界を、伝統的な工芸のテクニックや思想をとおして作品化しているアーティストを紹介します。

コラクリット・アルナーノンチャイ (b.1986) タイ
《おかしな名前の人たちが集まった部屋の中で歴史で絵を描く3》 2015年
ビデオ 24分55秒
Courtesy: Carlos/Ishikawa, London; C L E A R I N G, New York/Brussels; BANGKOK CITYCITY GALLERY, Bangkok

歴史との対話
MAM

東南アジアの新しい世代のなかには、さまざまな政治的、経済的、社会的な変化を繰り返してきた地域の歴史、とりわけ戦争や抑圧の歴史を訪ね、記憶を継承しようとする動きが見られます。また、現代アートの発展に大きな貢献をしてきた先の世代のアーティストの実践を、現代に継承しようとする意識も見られます。本セクションでは、歴史の再訪や、世代を超えた対話をとおして、今日の社会や現代美術をより大きな歴史のなかに位置づけようとしている作品を紹介します。

ロスリシャム・イスマイル(イセ)(b.1972) マレーシア
《アナザー・ストーリー》のためのドローイング 2017年
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