ドゥサディーさんとパッタイと作品を作りました！「いろんな世代の人と一緒にアーティストに出会う」開催レポート

2017.11.7（火）

ティーンズの参加者でディスカッション（2017年8月7日）

ラーニング・キュレーターと「サンシャワー展」担当キュレーターとで、展覧会関連のラーニング・プログラムについて意見交換をしました。アーティストを交えた世代間交流を目的とした新たなワークショップを実施するとしたらというディスカッションのなかで、ドゥサディー・ハッタクーンが候補に挙がりました。
「子どもといろいろな世代を対象にしたプログラムを行うとしたらどんな可能性がある？」と、ドゥサディーに問いかけたところ、「作品制作を体験するワークショップも可能だけど、パッタイを一緒に作るのはどう？」と返事が返ってきました。その後、展覧会オープン3カ月前の4月、ドゥサディーとタイのバンコクでワークショップについて意見交換をした際、パッタイを一緒に作ることが作品制作に繋がる深い意味があること、そしてそれがいろいろな世代の人とシェアするのに、とても良いテーマであることが確認できました。ドゥサディーをワークショップの出演者として迎えることは、特定の制作物を完成させることを目的にするのではなく、作品鑑賞をとおして対話することを大事にした私たちのプログラム企画にぴったりだと考えました。こうして、キッズ、ティーンズ、シニア、それぞれの世代の参加者同士が交流を持つプログラムが決定、最終日にすべての参加者で一緒にパッタイを調理することになりました。

8月の2週目、暑さ厳しい時期にバンコクからドゥサディーが来日していよいよプログラム本番。ティーンズ・プログラムの初日は、展覧会について思ったこと、考えたことを率直に言葉にするところから始めて、2日目にはシニア・プログラムの参加者と対話しながら展覧会を鑑賞し、その後ドゥサディーと対話を行いました。普段はあまりふれ合いのない世代の参加者と、積極的に作品の感想を共有する姿が見られました。

キッズ・プログラムの子どもたちは、展覧会を見た後に、ドゥサディーがバンコクで焼いて持って来てくれた、彼がいつも作品に使う陶磁器でできた素材を使って作品制作の追体験を行いました。

ドゥサディーさんのワークショップ（2017年8月10日）撮影：田山達之

作品制作に挑戦！（2017年8月10日）撮影：田山達之

シニア・プログラムの参加者の初日は、ティーンズの参加者たちと一緒に展覧会を見るところからはじめました。どのプログラムも、参加者が積極的に自分の言葉で語り、目に見えないけれども認識している生活のなかの出来事や、なかなか他の人には言い難い自分自身のアイデンティティーについてなど、話題は多岐にわたってアーティストとの対話が生まれていきました。

展覧会を鑑賞するティーンズ・プログラムの参加者たち（2017年8月7日）

ティーンズ、シニアの参加者で意見交換（2017年8月11日）

それぞれのプログラム最終日、参加者全員が集合してパッタイ作りに挑戦します。ドゥサディーにとってパッタイは母親との思い出が詰まった料理。ドゥサディーが皆の前で作り方を披露しました。そして、今度は小学生から大人までの混成グループにわかれて、参加者がいざパッタイを調理します。どのグループもドゥサディーの作り方をしっかり覚えて、分担しながら手際よく進めていきます。味も見事なもの。参加者が持ち寄った、思い出に残る食べ物も紹介し合い、世代を越えた交流が自然とグループ内で生まれていました。

「アーティストに出会う」最終日。いよいよパッタイ作りをします（2017年8月12日）

パッタイのほかに、参加者が思い出の食べ物を披露しあいました（2017年8月12日）

皆での食事が終わった後、もう一度展覧会会場に戻り、ドゥサディーがどんな作品を作っていたかを見に行きました。最後に参加者全員でプログラムの感想を共有したときには、ドゥサディーとの距離はプログラム初日よりも縮まっていました。「それぞれ見方が違っていてもわかり合えたことが楽しかった」「自分たちの身のまわりのことに着目することで作品が生まれていることを知ることができた。それをいろんな世代の人と一緒に語れることが面白かった」などの感想が参加者からあげられました。日常ではあまり交流のない世代でも、アーティストと一緒に美術館で時間を過ごすことで、自然に交流が生まれお互いの考え方を共有する。そんなプログラムも引き続き森美術館では提供していきたいと考えています。ドゥサディーとのワークショップの様子は動画でもご覧いただけます。