走泥社は1948年に京都で結成された陶芸家のグループで、1998年に解散するまで50年の長きにわたり活動しました。その存続年数はもとより、戦後の陶芸界を代表する作家たちが多数所属していたことからも、日本の陶芸史において特別な存在であったといえます。
発足時のメンバーには、八木一夫を中心として、鈴木治、山田光、松井美介、叶哲夫がおり、全員が京焼の伝統的な窯業地である五条坂周辺で活動していた若手作家でした。走泥社の成り立ちの背景には京焼の歴史があり、さらには、具体美術協会やパンリアル美術協会、墨人会や池坊など、終戦直後に京阪神でみられた前衛的な表現活動との関係があったといえます。 本展では、走泥社の資料や作品写真を通して、結成当時の活動の背景と要因を検証します(※1)。さらに、実験的な試みとして、本展の共同企画者であるアーティストの中村裕太が、1950年代から1960年代までの現代陶芸に見られる「造形の変遷」を読み解き、新作のインスタレーション作品として発表します。それらを通じて、伝統と革新の狭間で新しい表現を追い求めた陶芸作家たちの活動を振り返り、現代陶芸としての意義を読み解きます。
※1 走泥社の作品展示はありません。
MAMリサーチ007:走泥社―現代陶芸のはじまりに
2019.6.20(木)~ 10.27(日)