「カタストロフと美術のちから展」の作品リストはこちらよりダウンロードできます。(PDF/221KB)
セクションⅠ:美術は惨事をどのように描くのか―記録、再現、想像
セクションⅠでは、地震、津波などの天災や事故や戦争といった人災から、個人的な悲劇を表現した作品までを幅広く紹介しながら、「美術が惨事をどのように描いてきたのか」に焦点を当てます。惨事を扱った作品と一言で言ってもその手法はさまざまで、写実、フィクション、極端な抽象化など多岐に渡ります。また、2008年の世界金融危機を引き起こした現代のグローバル化したバーチャルな資本や、福島の原子力発電所事故などに見られる放射能汚染など、目に見えない脅威を可視化する作品も含まれます。惨事を美やユーモアを混じえて表現することができる美術の特性に触れながら、作家が惨状や恐怖をどのように記録・再現し、他者と共有して未来に語り継ごうとしているのかについて考察します。
セクションⅡ:破壊からの創造―美術のちから
セクションⅡでは、破壊から創造を生みだす「美術のちから」を紹介します。大惨事や悲劇は私たちを絶望へと突き落としますが、その一方で惨状が作家の作品制作の契機となることも事実でしょう。アーティストの豊かなイマジネーションによって制作された、再生、復興、より良い社会が表現された作品は、私たちに理想の未来について考える想像力を与えます。
美術は、医学と異なり大惨事に対しての即効薬にはならないかもしれませんが、代わりに社会に対する長期的な治療薬となりえるのではないでしょうか。希望のメッセージを伝達するものや、抑圧に対する団結のためのツールとして機能するもの、チャリティとして経済的な貢献をするもの、傷ついた心を癒すものなど、美術にはさまざまな力があります。このような美術が持つ、負を正に転ずる「ちから」に注目し、その可能性を問いかけます。