2015年9月 4日(金)

語られることのなかった物語~ディン・Q・レ作品紹介#4
《南シナ海ピシュクン》

ブログ連載第4回でご紹介するのは、《南シナ海ピシュクン》。海にヘリコプターが次々と墜落していく様子が大迫力の映像作品です。

《南シナ海ピシュクン》

海に次々に墜落するヘリコプター。その非現実的なCG映像は、ゲームのようにも見えます。
 1975年4月30日、南ベトナムのサイゴンが陥落し、ベトナム戦争は北ベトナム勝利のうちに幕を閉じました。その直前に、サイゴンから必死で脱出しようとする人々を乗せたアメリカ軍のヘリコプターが海上の航空母艦に次々と着艦、後続機が降りるスペースを確保するために、アメリカ兵の手によって甲板上のヘリコプターが海に投棄されました。その様子を誇張し、バッファローの集団を切り立った崖(ピシュクン)に追い詰めて落とすアメリカ先住民の狩猟方法になぞらえ、CGアニメーションによって表現しています。
ベトナム戦争のアイコンとして記憶されたヘリコプターの最期が、ユーモラスかつ皮肉なタッチで描かれています。

文:荒木夏実(森美術館キュレーター)


《南シナ海ピシュクン》
2009年
3Dアニメーション・ビデオ
6分30秒
所蔵:福岡アジア美術館
 

<関連リンク>

ディン・Q・レ展:明日への記憶
会期:2015年7月25日(土)-2015年10月12日(月)

・語られることのなかった物語~ディン・Q・レ作品紹介
(1)「フォト・ウィービング」シリーズ
(2)《農民とヘリコプター》
(3)《抹消》
(4)《南シナ海ピシュクン》
(5)《人生は演じること》
(6)《光と信念:ベトナム戦争の日々のスケッチ》

カテゴリー:01.MAMオピニオン
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