「MAMデジタル」は、森美術館がデジタルメディアを活用して展開するプログラムおよびそのプラットフォームの総称です。本展は、「MAMデジタル」のプログラムを、現代美術の多様性を紹介するシリーズ「MAMプロジェクト」の一環として、リアルな展示空間で開催する初めての試みです。
山内祥太(1992年岐阜県生まれ、神奈川県在住)は、インターネットが普及した1995年以降のリアリティと共に育った世代で、自己と世界の関係性や、自分の認識する世界と現実の間にある裂け目といったものを様々な方法で明らかにしようと試みてきました。映像、彫刻、インスタレーション、パフォーマンスなど表現メディアは多様で、クレイアニメーション、クロマキー、3DCG、3D印刷、VR、モーションキャプチャなどの技術も自由自在に用います。テクノロジーによる新しさの追求だけではなく、身体性の生々しさや人間らしい感情、矛盾する気持ちや状況といった複雑さを表現しようとしていることも、その作品の特徴です。
本展のための新作《カオの惑星》は、リアルタイムに変化していくオンラインゲーム型の映像インスタレーションです。展示会場内のタブレット端末上で参加できるほか、ウェブに参加サイトが公開され、PCやスマートフォンなど、どこからでもアクセスできます。心理テストのようないくつかの質問に答えていくとアバターのような「自分のカオ(顔)」が粘土のように形を変えながらつくられます。それがサーバーにアップロードされると、さまざまなカオが集まってできた作品上の惑星に「自分のカオ」が加わり、互いに反応し合うことで多様なドラマが生まれます。森美術館の展示空間では、複数のカオでできた変化し続ける惑星の映像に加えて、山内自身の顔が島のようになった3D彫刻も展示されます。こうして、デジタルかつリアルに存在する本作は、山内のいう「正も悪も美も醜も同居し、時に喜びながら時に悲しみ、時に怒るというような惑星」として会期中、常に変化し続けます。皆さんもぜひ、参加してみてください。
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・参加サイト公開期間:2022年11月30日(水)~2023年3月26日(日)
・ご利用にあたっては、参加サイトに記載の注意事項を必ずご一読ください。
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《カオの惑星》
2022年
インタラクティブ・ミクストメディア・インスタレーション
システムエンジニア:曽根光揮、早川翔人
3Dモデリング:加藤大介
サウンド:小松千倫
展示風景:「MAMプロジェクト030×MAMデジタル:山内祥太」森美術館(東京)2022-2023年
撮影:木奥惠三
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《カオの惑星》
2022年
インタラクティブ・ミクストメディア・インスタレーション
システムエンジニア:曽根光揮、早川翔人
3Dモデリング:加藤大介
サウンド:小松千倫
展示風景:「MAMプロジェクト030×MAMデジタル:山内祥太」森美術館(東京)2022-2023年
撮影:木奥惠三
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《舞姫》
2021年
インスタレーション、パフォーマンス
ミクストメディア
システムエンジニア:曽根光揮
衣装:Kurage
3Dモデリング:大石雪野
サウンド:小松千倫
パフォーマー:岡田智代
展示風景:「TERRADA ART AWARD 2021 ファイナリスト展」寺田倉庫(東京)2021年
撮影:田山達之
※参考図版
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「Tina」“Sculpture”
2022年
79.5✕73✕39 cm
UV光硬化樹脂、ラッカー、エナメル、ポリエステル、義眼
3Dモデリング:大石雪野
展示風景:「愛とユーモア」EUKARYOTE(東京)2022年
撮影:Yahara Ryo
※参考図版
山内祥太
1992年岐阜県生まれ、神奈川県在住。2014年金沢美術工芸大学彫刻科卒業、2016年東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修了。主な個展に「第二のテクスチュア(感触)」GalleryTOH(東京、2021年)、「Ballet Mécanique」RICOH ART GALLERY(東京、2022年)、「愛とユーモア」EUKARYOTE(東京、2022年)など。主なグループ展に「六本木クロッシング2019展:つないでみる」森美術館(東京、2019年)、「多層世界の中のもうひとつのミュージアム—ハイパーICCへようこそ」NTTインターコミュニケーション・センター [ICC](東京、2021年)、「鈴木大拙展 Life=Zen=Art」ワタリウム美術館(東京、2022年)、「リボーンアート・フェスティバル2021-22」(宮城県、2022年)、「アルスエレクトロニカ・フェスティバル2022」(オーストリア、リンツ、2022年)など。主な受賞歴に「TERRADA ART AWARD 2021」金島隆弘賞・オーディエンス賞、「第25回文化庁メディア芸術祭」アート部門優秀賞など。