ルイーズ・ブルジョワ(1911年パリ生まれ、2010年ニューヨークにて没)は、20世紀を代表する最も重要なアーティストの一人です。70年にわたるキャリアの中で、インスタレーション、彫刻、ドローイング、絵画など、さまざまなメディアを用いながら、男性と女性、受動と能動、具象と抽象、意識と無意識といった二項対立に潜む緊張関係を探求しました。そして、対極にあるこれらの概念を比類なき造形力によって作品の中に共存させてきました。
ブルジョワの芸術は、主に自身が幼少期に経験した、複雑で、ときにトラウマ的な出来事をインスピレーションの源としています。彼女は記憶や感情を呼び起こすことで普遍的なモチーフへと昇華させ、希望と恐怖、不安と安らぎ、罪悪感と償い、緊張と解放といった相反する感情や心理状態を表現しました。また、セクシュアリティやジェンダー、身体をモチーフにしたパフォーマンスや彫刻は、フェミニズムの文脈でも高く評価されてきました。
さまざまなアーティストに多大な影響を与えているブルジョワの芸術は、現在も世界の主要美術館で展示され続けています。日本では27年ぶり、また国内最大規模の個展となる本展では、100点を超える作品群を、3章構成で紹介し、その活動の全貌に迫ります。
本展の副題「地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」はハンカチに刺繍で言葉を綴った晩年の作品からの引用です。この言葉は、ブルジョワの感情のゆらぎや両義性を暗示しつつ、ブラックユーモアのセンスをも感じさせます。自らを逆境を生き抜いた「サバイバー」だと考えていたルイーズ・ブルジョワ。生きることへの強い意志を表現するその作品群は、戦争や自然災害、病気など、人類が直面する、ときに「地獄」のような苦しみを克服するヒントを与えてくれることでしょう。
ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ
主催 | 森美術館 読売新聞社 NHK |
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協賛 | ゲラン株式会社 鹿島建設株式会社 株式会社大林組 株式会社竹中工務店 トヨタ自動車株式会社 三機工業株式会社 |
特別協力 | イーストン財団 |
協力 | 全日本空輸株式会社 |
企画 | 椿 玲子(森美術館キュレーター)、矢作 学(森美術館アソシエイト・キュレーター) |
企画監修 | フィリップ・ララット=スミス(イーストン財団キュレーター) ※本展覧会はニュー・サウス・ウェールズ州立美術館(シドニー)で、ジャスティン・パトン(インターナショナル・アート主任キュレーター)とエミリー・サリバン(インターナショナル・アートアシスタント・キュレーター)が企画した「ルイーズ・ブルジョワ:昼が夜を侵略したのか、夜が昼を侵略したのか」展の一部をもとに、森美術館がイーストン財団(ニューヨーク)と共同で企画したものです。
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