27年ぶりとなる国内最大の個展、作品の約8割が日本で初公開
1997年以来、27年ぶりに開催される国内最大規模の個展で、彫刻、絵画、ドローイング、インスタレーションなど100点以上を一挙に公開します。
ブルジョワは98歳で他界するまで制作を続け、晩年にキャリアの代表作ともいえる作品を多く発表しています。布を用いた作品など、本展出品作品の約8割が、日本初公開の作品となります。
世界的な評価が高まる初期絵画作品を展示
ブルジョワがニューヨークに移住してから約10年の間に制作された初期絵画作品に注目した展覧会が、メトロポリタン美術館(ニューヨーク、2022年)やベルヴェデーレ美術館(ウィーン、2023-2024年)で開催され、近年世界的に高い関心を得ています。本展では、アジア初公開となる10点以上を含むこれらの初期絵画作品をまとめて展示します。
ブルジョワは、1938年、アメリカ人美術史家のロバート・ゴールドウォーターとの結婚を機にパリからニューヨークに渡りました。その頃描かれた絵画には、自画像、家、フランスに残してきた家族、植物、自然、さまざまな建築的なフォルムなど、その後数十年にわたって繰り返される重要なモチーフが登場します。なかでも、女性を守ると同時に縛りもする家によって上半身が覆い隠された女性像を描く「ファム・メゾン(女・家)」シリーズは、1960-70年代のフェミニズム運動で高く支持されるなど、ブルジョワのキャリアを象徴する作品群のひとつです。
六本木ヒルズを象徴するパブリック・アート《ママン》をはじめ、蜘蛛をモチーフとした作品を紹介
1947年に描かれた小さなドローイングから、その後制作された大きなブロンズの彫刻に至るまで、蜘蛛はブルジョワの芸術を代表するモチーフとして繰り返し登場してきました。彼女にとって蜘蛛は、家業のタペストリー工房を営み、ブルジョワが「親友」とみなしていた温和で勤勉な実母を象徴しています。また、糸で傷を繕い、癒す修復家である一方、周りを威嚇する捕食者でもあると説明しており、母性の複雑さを表現するものでもあります。
さらに、蜘蛛が巣作りのために体内から糸を出すように、自身の体から負の感情を解放するために作品を作っているとも語っています。蜘蛛は彼女の自画像でもあるのです。
ブルジョワの世界観を伝える自身の言葉を展示室の壁面に掲出
ブルジョワは才能のある文筆家でもありました。膨大な日記や手紙のほか、自身の精神状態を分析した数百もの記録が残されています。これらの文章は啓示的で、不安、怒り、嫉妬、殺意、罪悪感、同情、感謝、愛といった複雑な感情や心理状態を掘り起こしています。本展では作品に加え、ブルジョワが書き綴った言葉も会場各所に掲出します。
ジェニー・ホルツァーによるルイーズ・ブルジョワの言葉を用いた作品などを展示
言葉を用いた作品で世界的に知られるコンセプチュアル・アーティスト、ジェニー・ホルツァー(1950年米国オハイオ州生まれ)は、1990年後半から生前のブルジョワと交友関係を築き、彼女の文章に強い関心を抱いています。2022年にはスイスのバーゼル市立美術館で開催されたブルジョワの展覧会にキュレーターとして携わり、ブルジョワの言葉を使用した映像作品をバーゼル市内に点在する建築物のファサードに投影しました。今回は、和訳した文章も用いた、本展のための新作を展示します。
また、本展では、ニューヨークのアンダーグラウンド・シーンで活躍したスーザン・クーパー(1952-2023年)が、ブルジョワが1978年の自作《対決》内で企画したパフォーマンス《宴/ボディ・パーツのファッションショー》に出演している記録映像を展示します。
ブルジョワの活動歴とアーカイブ資料を展示
ルイーズ・ブルジョワの98年間の人生とアーティストとしての70年ものキャリアの全貌を、約10メートルの年表で紹介します。また、精神分析の記録、展覧会のチラシ、作家の自伝的映像などのアーカイブ資料に加え、ブルジョワが愛用していたゲランのフレグランス「シャリマー」の香水瓶を展示。その場で香りも体験できます。