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* 参考作品
独自の教育システムを実施するNPO、特定の場所を持たずに不定期に議論の機会を設けているグループ、2000年以降に開催されたトリエンナーレのボランティアグループを前身とする団体、東日本大震災後に東京から移住した個人が設立したもの、さらには多様なジャンルの表現者が住まうシェアハウスなど、国内各地で“議論のためのプラットホーム”が拡がりを見せています。作品展示や販売を活動の中心としてきた従来の美術館やギャラリーといったアートスペースとは異なり、そこでは若い世代のアーティストやアートファンが、アートと社会の新しい関係性を模索するためのプラットホームが形成されています。
「六本木クロッシング2013展:アウト・オブ・ダウト」の関連プログラムとして構想された「ディスカーシブ・プラットホーム」は、結果ではなく、プロセスとしての「議論」そのものを、展覧会に出品されている作品と同様にひとつの創造的表現としてとらえ、世代を超えてさまざまなバックグラウンドの人たちと、同時代について考えるためのプラットホームです。企画には、2000年以降東京を中心に活動してきた特定非営利活動法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]、blanClass、CAMPの3グループを迎え、森美術館とともに、今日の日本の現代アートの動向について長時間にわたり議論を重ねてきました。そこから生まれた10以上のプログラムは、各グループのこれまでの活動を基軸に、森美術館とのコラボレーション企画よる新しいプログラムも含み、内容的には「格差」、「労働」、「ジェンダー」など芸術生産の周辺にある課題についても話し合います。さらに、企画チームが活動の動機や目的に共感した、他にはない魅力ある活動を展開するグループを、国内各地から29件選出しました。むろんリストは限定的なもので、これ以外にも国内外に紹介すべきグループが多く存在していると考えています。
「ディスカーシブ・プラットホーム」をとおして、ひとつの結論を見出すのではなく、今日の日本のアートシーンが抱えている多種多様な課題が浮き彫りになることを期待しています。
特定非営利活動法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト](堀内奈穂子) blanClass(小林晴夫) CAMP(井上文雄) 森美術館パブリックプログラム(白木栄世、水田紗弥子) |
AITは、2002年の立ち上げ以来、東京に必要なのに存在していなかったアートのプログラムや仕組みを考えてきました。当時はまだ珍しかった現代アートの学びの場である「MAD(Making Art Different)」や、アーティストやキュレーターが移動し、一定期間別の土地に滞在するアーティスト・イン・レジデンスプログラムは、活動を重ねる中で国内外問わず、多くのアーティストやキュレーター、受講生のネットワークや知の回路をつくってきました。
今回のディスカーシブ・プラットホームでは、日本のさまざまな場所で行われている実験的な学びの場や、草の根的な活動をただ紹介するのではなく、まずは私たちが互いに深く学び合うことを目的のひとつとしています。そして、作品に限らず新たな表現が生まれるまでの思考や社会背景を考察し、それを形にする試行錯誤の過程を丁寧に眺めることで、新たなアートの見方・関わり方を発見できる場になればと思います。
blanClassは、横浜の住宅街にある小さなスペースを拠点に芸術を発信している。ワンナイト完結のどんなことでもありのLive Art+公開インタビューや、杉田敦、CAMP、眞島竜男によるシリーズ企画、レクチャー&トークセッションを展開。SNSを積極的に活用するなど、アーカイブの方法をオルタナティブに模索してきた。
いつしかblanClassは、さまざまな世代のアーティストたちが作品未満の「考え」を試す場になった。そこに示されたものは、完成した答えとしての「作品」ではなく、未解決で不確定でさえあるけれど、確かにあるなにかを発見し、考えるために必要な機会やツールであり、仕掛けのようなものかもしれない。
表現ありきの実験や実践を成立させるためには、その自由を阻むものをできるだけ取り除いた方がよい。もっとも手強い制約は思い込みに違いないのだから、形式とかジャンルとか役割分担なんかを忘却させる企てや、もう一つの選択肢を工夫することが肝心なのだろう。
教えるとか教わるとか学ぶとかの前に、正直さっぱりわからないと思うものの方が多い。歴史に塗り込められた殆どのものがそうなのだから、いま起きたものはなおさらのこと。目の前に現れたなにかに対して躊躇なく対応することが「Next Education」になりうるのでは? と思ったことがあるが、そういう営みは「Discursive」といえるだろうか?
正直、「ディスカーシブ・プラットホーム」としてどんなことをするのが面白いのか、まだよくわからないので、それを考えるために、CAMPがやりたいと思っていることを書きます。CAMPは、美術館で働いている人と、アートや社会、政治、経済、あるいは生活について、率直に話し合いたいと思っています。そのうえで「ディスカーシブ・プラットホーム」について、美術館の関係者だけでなく、アートに関心のあるさまざまな人と一緒にもう一度考えてみます。時間がかかるかもしれません(たぶん、六本木クロッシング2013は終わってしまうと思います)。効率はよくないし、はっきりとした成果もないかもしれません。それでも、よくわからないことについて、意見を交換したり、話し合ったり、考えたりすることが重要であると、CAMPは考えています。
10数本のプログラムが、「六本木クロッシング2013 展」の会期中、森美術館の内外にて展開されます。これらは、各グループのこれまでの活動を基軸に森美術館とのコラボレーション企画による新しいプログラムも含み、内容的には「格差」、「労働」、「ジェンダー」など芸術生産の周辺にある課題にまでおよびます。
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活動の動機や目的に共感した、他にはない魅力ある活動を展開するグループを、国内各地から29件選出しました。