2013年10月16日(水)

1分でわかるアウト・オブ・ダウト~展覧会の見どころ(3)
日本古来の自然観から、近代化の意味を問う

「六本木クロッシング2013展:アウト・オブ・ダウト」で注目すべき3つめの見どころは、「日本の自然観と不可視のエネルギー」。東日本大震災で地震や津波が見せたのは、人為を超えた自然の大いなる力でした。日本人は古来、自然現象や岩、樹木、山に神々を見てきたように、自然のなかに目に見えないエネルギーを感じてきました。

東日本大震災以降、福島原発事故が、合理性や経済を優先してきた価値観の限界を明らかにした一方で、地震や津波は日本古来の自然観や宗教観、不可視のエネルギーへの意識を覚醒しました。それは、大地、水、火、風、空など森羅万象を司るさまざまな要素とそれらの関係性などを考えさせるものでもあります。異なる要素が宇宙の均衡を保つという古来の一元論的な考え方は、日本やアジアが世界に提示できる重要な視点です。

本展では、1960年代末に見られた新しい彫刻の動向「もの派」を代表するアーティストのひとり、菅木志雄(1944年生まれ)を紹介しています。関連性や連続性、「空」の意味を考えさせる新作です。また、陶芸をタイルの社会史から考える中村裕太(1983年生まれ)、江戸時代中期に生まれた自在置物の伝統を継承する満田晴穂(1980年生まれ)、インドの少数民族サンタル人との活動を通して近代化や都市化の意味を再考させる岩田草平(1979年生まれ)など、日本の若い世代が伝統的な自然観やアニミズム的信仰などを起点に近代化のプロセスとそこで忘れてきた何かを考えなおすことでもあります。


展示風景「六本木クロッシング2013展:アウト・オブ・ダウト--来たるべき風景のために」
菅 木志雄
撮影:渡邉 修


展示風景「六本木クロッシング2013展:アウト・オブ・ダウト--来たるべき風景のために」
岩田草平×プロマイノリティ
《珍客亭》
2013年
土、ワラ、他
400×400×400 cm
撮影:渡邉 修

さらに、本展では岩田草平×プロマイノリティとしてインドの少数民族サンタル人5名を招聘。彼らの伝統的な土壁工法による家が、都市を象徴する六本木ヒルズ内の毛利庭園に会期中を通して設置されます。
 

<関連リンク>

1分でわかるアウト・オブ・ダウト

・1分でわかるアウト・オブ・ダウト~展覧会の見どころ
(1) 現在と過去の作品の対比を通して紐解く、社会の転換期とアート
(2) 「ナンセンス」があらわす批判精神とは?
(3) 日本古来の自然観から、近代化の意味を問う
(4) グローバルに広がる潮流「ポスト・オブジェクト」

森美術館10周年記念展
「六本木クロッシング2013展:アウト・オブ・ダウト―来たるべき風景のために」

2013年9月21日(土)-2014年1月13日(月)

カテゴリー:01.MAMオピニオン
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