2013年10月15日(火)

1分でわかるアウト・オブ・ダウト~展覧会の見どころ(2)
「ナンセンス」があらわす批判精神とは?

本展出品アーティストの多くは1970年代から80年代生まれですが、日本の戦後美術を体験してきた世代との対話を通して、あらためて現代を考えるきっかけになることを期待しています。
「ナンセンス」は、単なる無意味な行動や表現ではなく、現状に対するポジティブな問題提起なのです。

日本の大衆文化を牽引してきた近代の退廃的、反抗的精神。この批判的精神に裏付けられた「ナンセンス」は、既存の価値観の大きな転換を生み出す原動力となりました。たとえば、1930年代の「エロ・グロ・ナンセンス」、1960年代の前衛美術などに見られる「滑稽さ」や「不条理さ」などは、大衆に大きく働きかけがなされ、その精神が共有されることで、大きな価値の転換を生み出しました。
この「ナンセンス」の系譜は日本美術において、現代まで脈々と受け継がれていますが、今日においてもこのような価値の転換は有効なのでしょうか。「六本木クロッシング2013展:アウト・オブ・ダウト」では、「ナンセンス」という観点から、美術や社会に向けられた批評的姿勢をみつめます。

「見どころ(1)」でも触れた赤瀬川原平(1937年生まれ)は、1970年から71年にかけて『朝日ジャーナル』誌のために描いた『櫻画報』で、当時の社会的事件や関心をパロディや風刺をこめて表現しています。また、若い世代の丹羽良徳(1982年生まれ)は、創立90年を超えた日本共産党の本部や支部に「カール・マルクスを掲げて下さい」と提案してまわり、空港でも案内放送でカール・マルクスを探してもらいます。いずれも「ナンセンス」なアクションや笑いを通して、さまざまな価値観や意味を再考させてくれるものです。


展示風景「六本木クロッシング2013展:アウト・オブ・ダウト―来たるべき風景のために」
丹羽良徳
《日本共産党にカール・マルクスを掲げるように提案する》
2013年
2面マルチ・ビデオ・プロジェクション、大型拡声器、旗、垂れ幕、パネル
18分2秒
Courtesy: Ai Kowada Gallery, Tokyo
撮影:渡邉 修
 

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1分でわかるアウト・オブ・ダウト

・1分でわかるアウト・オブ・ダウト~展覧会の見どころ
(1) 現在と過去の作品の対比を通して紐解く、社会の転換期とアート
(2) 「ナンセンス」があらわす批判精神とは?
(3) 日本古来の自然観から、近代化の意味を問う
(4) グローバルに広がる潮流「ポスト・オブジェクト」

森美術館10周年記念展
「六本木クロッシング2013展:アウト・オブ・ダウト―来たるべき風景のために」

2013年9月21日(土)-2014年1月13日(月)

カテゴリー:01.MAMオピニオン
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