インタビューを通して本展、作家の実像に迫る「1分でわかる会田誠」第2回では、本展で発表する新作や、新たな試みとなる「平成勧進プロジェクト」について、会田の思いを聞いています。
11月17日から森美術館でスタートする現代美術作家・会田誠の大規模な個展「会田誠展:天才でごめんなさい」にご期待下さい。
「会田誠展:天才でごめんなさい」についてはこちら
2012年11月17日(土)-2013年3月31日(日)
会田 誠(美術家)
-- 美術館での展示について、こだわりや執着はないのですか?
「いや僕は、美術館で展示をしたいという想いが、人一倍強いほうだと思います。そもそも、コレクターさんが自分のリビングに飾って楽しむことを想定して作品を作れないんです。とはいえ、僕が描く性的な絵はサイズが小さく、これはエロティックなアートを収集している方への楽しみの提供だと思っています。同時に僕の絵は、看板絵のような作品もあります。とにかく巨大で、人々が遠くから看板をみるように、モニュメントのようなものとして作りたいという思いもある。だからこそ、美術館というパブリックなスペースで入場料を払えば誰でもみることができるという場での展示を求めているんです。その公共性と、エロティックなものが好きという気持ちが僕の中には矛盾しながら存在していて(笑)。それが《大山椒魚》や《滝の絵》など、美術館でのギリギリOKなエロティックさを追求した作品が、最近増えている理由ですね。新作にも、素っ裸の女の子たちが、銃で撃たれまくっているという作品《ジャンブル・オブ・100フラワーズ》があります。コトバで聞くと印象がよくないと思うのですが、打たれても血が飛び散るのではなく、イチゴや花、ダイヤモンドなど可愛らしいものが散乱している。なるべく女の子から生々しさを排除し、肌の質感はリカちゃん人形のような感じにしています。」
《大山椒魚》
2003年
アクリル絵具、パネル
314×420 cm
高橋コレクション蔵、東京
Courtesy:Mizuma Art Gallery
《滝の絵 》
2007-10年
アクリル絵具、キャンバス
439×272 cm
国立国際美術館蔵、大阪
Courtesy:Mizuma Art Gallery
-- では新作の一番のみどころは、大きいモニュメント的な作品に性的なモチーフがどう入れ込まれているか、というところでしょうか。
「そうですね。ギャラリーでは展示できないほどの大きな作品です。大きな絵は、脚立に登ったり降りたりしながら描くので、思ってる以上に体力が必要なんです。実際僕は今、老人の一歩手前だけど、まだ体が動く。もう少ししたら体力的に厳しくなる予感がしているので、というか......すでにけっこうしんどいんですけど(笑)。でも、現実的にバカみたいな大作はあと10年くらいかなと考えています」
《万札地肥瘠【ひせき】相見図》
2007年
アクリル絵具、インクジェットプリント、キャンバス
450×1000 cm
CG制作協力:林 靖高
Courtesy:Mizuma Art Gallery
-- 今回は新たな試みとして、展覧会の個人サポーターを募る「平成勧進プロジェクト」(*2)も始動しています。TwitterやFacebookなどでファンのみなさんとの交流も盛んです。
「正直に言えば、こちらが意図して発案したわけではなく、大きなスポンサーが難しかったというのが理由ではあるのですが。でも、海外の美術館では『ファンドレイジング』として、個人サポーターを募ることはよくあります。森美術館としても、こういうプロジェクトを試してみたいということは、キュレーター側にもあったのだと思います」
*2 会田誠の芸術活動、展覧会制作の資金的サポートをお願いする「会田誠:平成勧進プロジェクト」
http://www.mori.art.museum/contents/aidamakoto/index.html
-- 特典に《ジャンブル・オブ・100フラワーズ》(*3)のエスキースまたは、会田さんの分身キャラクター「おにぎり仮面」扮する《考えない人》(*4)をつけるというのは、会田さんのアイデアなのですか?
「特典の話がでたのが、大作のための下絵を描いていた時で、この下絵に色をつけたものであれば可能かなと。これは、本当のエスキースなんです。美術の世界には、"本当のエスキース"と"偽物のエスキース"というものがあり、露骨な"偽物のエスキース"は作品が完成した後に、売る為に制作される。結果から抽出した"偽物のエスキース"は、世に山ほど出回っています。でも、今回僕が提供しているエスキースは、これから作る作品のために、ウロウロと模索している段階の本当の副産物なんです。だから実際に出来上がった作品は、エスキースとは全く異なるものになっている。このエスキースを描いたことで、ここはもっとこうしたほうがいいという反省を踏まえて、作品はできあがるんです。作家にとって、途中段階のものが世に出回るのはあまり好ましくないことなので、今後はもうやらない予定です。だから、今回限りのレアなものになっているのではないかなと思います」
平成勧進プロジェクト15,000円サポーター特典
限定エディション作品《ジャンブル・オブ・100フラワーズ》
平成勧進プロジェクト500,000円サポーター特典
限定マルチプル作品《考えない人》
*3 15,000円サポーター特典 限定エディション作品《ジャンブル・オブ・100 フラワーズ》
http://www.mori.art.museum/contents/aidamakoto/sanka/index.html#002
*4 500,000円サポーター特典 限定マルチプル作品《考えない人》
http://www.mori.art.museum/contents/aidamakoto/sanka/index.html#003
Photo:Jiro Konami Text&Edit:Madoka Hattori
<関連リンク>
・「1分でわかる会田誠」
(1)"コソコソ見るから、エロ本は面白い"
(2)"バカみたいな大作はあと10年ぐらい"
(3)"日本人の心の分裂・断絶について感じた驚きを作品に"
・「会田誠展:天才でごめんなさい」
2012年11月17日(土)-2013年3月31日(日)
・Web Magazine ハニカム
「MAKOTO AIDA:初の大規模個展を控えた、美術家・会田誠の挑戦」