2012年10月12日(金)

「1分でわかる会田誠:初の大規模個展を控えた、美術家の挑戦」(1)
"コソコソ見るから、エロ本は面白い"

11月17日から森美術館でスタートする会田誠の大規模な個展「会田誠展:天才でごめんなさい」。公立の美術館ではNGとされるようなキワドイ作品を「18禁部屋」として展示、さらには原発事故後の議論を題材にした巨大なモニュメントや大きな新作絵画など、約100点の作品が一堂に公開されます。11月10日には、2009年から約1年間、国内外での制作風景と家族との掛け合いを追いかけたドキュメンタリー映画「駄作の中にだけ俺がいる」が公開予定です。"取り扱い注意作家"としてエロ・グロ・美少女・戦争などを題材に作品を発表してきた会田は、森美術館というアートのど真ん中で、どんなタブーを仕掛けるのか−。

「1分でわかる会田誠」では、インタビューを通して本展や作家の実像に迫ります。

「会田誠展:天才でごめんなさい」についてはこちら
2012年11月17日(土)-2013年3月31日(日)


会田 誠(美術家)

-- 会田さんは国内外で数々の展覧会を開催されてきましたが、美術館での大規模な個展は、今回が初めてだそうですね。

「ギャラリースペースでの個展というのが、僕の中での作品を展示する空間の基準になっているので、森美術館の大きな空間で、この作品数ではスカスカになってしまうのか、それともギュウギュウで暑苦しく見えてしまうのか。やってみないとわからないというのが正直なところです。とはいえ、普段と変わらずに淡々と制作をしています。大きいスペースに合わせて、今までよりも大きな作品を作っていますが、今考えているのは、その新作の四角いキャンバスを完成させることだけ。今回の展覧会が、僕の作家人生のゴールでもないし、大きなステージだからといって興奮したりもしません。なぜなら、美術家としての活動は今後も続いていくわけですから......」

-- では、展覧会の構成はどのように考えているのでしょうか。今までの作品が一堂に介すということは、年代順に追っていくとか?

「入り口に数点、学生時代の初期作品を展示して、新作の大きな作品は最後の部屋に展示する予定です。だから、なんとなく年代順にみえなくもないのですが、真ん中はもうグチャグチャですね。僕の作品は、分類がしにくいんです。ある種の絵描きさんのようにキャンバスサイズが決まっているのであれば可能だと思いますが、実際は作品の大きさやマテリアルもバラバラなので、年代事に並べるのは難しいんです」


《切腹女子高生》
2002年
アクリル絵具、ホログラムフィルム、透明フィルムに出力
119×84.7 cm
渡井康之氏蔵
Courtesy:Mizuma Art Gallery

-- 通称「18禁部屋」ができるそうですね。

「僕の作品の中には公立の美術館で堂々と展示できないようなものがいくつかあり、そういう作品をどういう扱いにするか、森美術館チームと話し合いを重ねました。その類の作品を出さないか、もしくは『18禁部屋』をつくるかを相談し、部屋をつくることにしました。『18禁部屋』に展示する作品の基準は、小中学生が見てはいけないモノ。子どもたち向けのツアー(*1)があるのですが、その際には『18禁部屋』は含まれない予定です。とはいえそもそも美術館は公共の施設です。そこで"僕のキワドイ絵も芸術なんだ!"と主張して、無理矢理にでも飾ってほしいとは思わないんですけどね」

*1 会期中、教育普及活動の一環として行っているプログラム

 


《巨大フジ隊員VSキングギドラ》
1993年
アクリル絵具、アセテート・フィルム
91×116.7 cm
個人蔵
Courtesy:Mizuma Art Gallery

-- 作品として作られているものであれば、誰しもが平等に見ることのできる状況を求める作家は多いと思いますが、あえて主張しない理由は?

「特に性的な作品は微妙でして......。春画などの歴史を辿ってみると、みんなコソコソ見て楽しんでいたわけですよね。コソコソ見るから、エロ本は面白い。僕は若い時から、そういったものをコソコソと、ちょっと罪悪感や後ろめたさをもちながら見てきました。その時間は、振り返るととても充実していて。何でもかんでも、おおっぴらにすればいいというわけでもない。幸いにして、僕の所属しているミヅマアートギャラリーは理解があり、性的な作品のガイドラインを注意されたことはありません。僕のホームグラウンドであるギャラリーで禁じられることなく作品が発表できるのであれば、特に美術館にそのガイドラインを強制しようとは思わない。『18禁部屋』に展示する作品のいくつかは(犬シリーズなど)、きっと美術館では無理だろうなと思っていたので、そこがOKとなっただけでもよかったなと」

Photo:Jiro Konami  Text&Edit:Madoka Hattori
 

<関連リンク>

・「1分でわかる会田誠」
(1)"コソコソ見るから、エロ本は面白い"
(2)"バカみたいな大作はあと10年ぐらい"
(3)"日本人の心の分裂・断絶について感じた驚きを作品に"

「会田誠展:天才でごめんなさい」
2012年11月17日(土)-2013年3月31日(日)

・Web Magazine ハニカム
「MAKOTO AIDA:初の大規模個展を控えた、美術家・会田誠の挑戦」

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