2011年5月16日(月)

アートコレクター西高辻信宏さんのフレンチ・ウィンドウ展、ご案内します。(1)~デュシャンは、フランス現代アートの出発点

私財を投じて自身のコレクションを日々、築き上げている現代美術コレクターたち。
今年で10周年を迎えたマルセル・デュシャン賞はフランスのコレクター団体「ADIAF」により設立され、フランスの現代美術作家たちの活動を支援し、広く世界に紹介してきました。開催中の「フレンチ・ウインドウ展」はこのADIAFにより選ばれたデュシャン賞の受賞作家とノミネート作家による作品を一同に集めた展覧会です。

現在六本木ヒルズ各所で配布中の『HILLSLIFE』48号では、日本を代表する現代美術コレクターの一人、西高辻信宏氏による「フレンチ・ウインドウ展」案内が特集記事として掲載されています。日本のコレクターにより紹介されるフランスのコレクター展。この興味深い特集を森美術館公式ブログ上でもご紹介いたします。

『HILLSLIFE』とは
六本木ヒルズなどで無料配布されているエリアマガジン
48号は、マルセル・デュシャンの《フレッシュ・ウィドウ》が表紙。機会があればぜひ手にとってご覧ください。
http://www.roppongihills.com/hillslife/


案内役の西高辻信宏さん

華やかなフランス現代美術に浸れる展覧会「フレンチ・ウィンドウ展」が開かれている。その魅力を探らんと、会場を巡っていただいたのは西高辻信宏さん。アートコレクターにして太宰府天満宮権宮司、そして太宰府天満宮アートプログラムを自ら立ち上げ運営する"多才の人"の眼に、六本木に出現した現代美術のフロントラインはどう映るか。

ペインティングから写真、映像、彫刻や空間全体を作品と見立てるインスタレーションもあちこちに。ありとあらゆる素材と手法を用いた作品が、広大な会場にずらりと並ぶさまは壮観のひと言だ。一つひとつがフランス現代美術の最先端を形容する作品であり、見応え十分。あちらに足が止まり、こちらで眼を奪われ......。順路をひと通り辿るのに、予想以上に時間がかかるかもしれないのでご注意を。

出品アーティストは、2000年以降にマルセル・デュシャン賞を受賞もしくはノミネートされた面々である。同賞を主宰・運営する「ADIAF」は、約300人の現代美術コレクターによる団体。多額を投じて自身のコレクションを日々、築き上げているメンバーの審美眼に適ったのだから、名品ぞろいの展示なのも納得がいく。

強烈な個性を発散させているのに、知的で酒脱でもある。そんなフランスのアートの精髄、ひいてはフランス文化の粋がここにそろっている。


マルセル・デュシャン 《瓶乾燥機》 1914/64年、《折れた腕の前に》 1915/64年、《旅行者用折りたたみ品》 1916/64年、《泉》 1917/64年、《罠》 1917/64年、《三つの停止原器》1913-14 /64年
京都国立近代美術館蔵
撮影:渡邉 修
©Succession Marcel Duchamp / ADAGP, Paris & SPDA, Tokyo, 2011

マルセル・デュシャンのレディメイド作品の数々。一列に並ぶと、ますます不可思議さが増す。「ここが現代美術の出発点なんですよね。同時代にこれを真っ先に評価した人はすごいですね」(西高辻)


ワン・ドゥ 《イエローページ》 2009年
Courtesy: Galerie Laurent Godin, Paris
©ADAGP, Paris & SPDA, Tokyo, 2011

「電話帳のようなものを覗き込んでみると、そこには電話番号という有益な情報の代わりに違うものが......」(西高辻)。中国湖北省出身、ワン・ドゥの作品は、大量の情報に頼りきっている現代人の日常生活を批評してみせる。


ブリュノ・ペナド 《無題、大きな一つの世界》 2000年
ポワトゥ=シャラント地域現代芸術振興基金蔵、フランス
©ADAGP, Paris & SPDA, Tokyo, 2011
カミーユ・アンロ 《テヴォー》 2010年
個人蔵
Courtesy: the Artist and the kamel mennour, Paris
撮影:渡邉 修

どこかで見たことのあるこの姿は、タイヤメーカーのキャラクター"ミシュラン・マン"を黒人のようにアレンジしたもの。見知ったイメージがいかようにも読み取り可能であることを改めて考えさせてくれる。

消防ホースをまじまじと見つめる機会など、なかなかないもの。そこから新たな意味や美を発見することがあるかもしれない。「作品を通して、美術史を引用しつつひっくり返すという果敢な挑戦をしているように見えますね」(西高辻)

~HILLS LIFE 48号より~

『HILLSLIFE』とは
森美術館のある六本木ヒルズや表参道ヒルズのストリートの話題からトレンド情報など、楽しい情報満載のエリアマガジンです。
http://www.roppongihills.com/hillslife/
 

<関連リンク>

・アートコレクター西高辻信宏さんのフレンチ・ウィンドウ展、ご案内します。

第1回 ~デュシャンは、フランス現代アートの出発点
第2回 ~森美術館ならではの展示です
第3回 ~フランス現代アート、伝統の底力

「フレンチ・ウィンドウ展:デュシャン賞にみるフランス現代美術の最前線」
会期:2011年3月26日(土)~8月28日(日)

・森美術館flickr(フリッカー)
展示風景「フレンチ・ウィンドウ展:デュシャン賞にみるフランス現代美術の最前線」
展示風景「フレンチ・ウィンドウ展:デュシャン賞にみるフランス現代美術の最前線」(2)

カテゴリー:01.MAMオピニオン
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