2010年10月22日(金)

アートコレクター宮津大輔さんと行く 「秋の青山ファッション&アート散策」

2010年10月2日(土)気持ちの良い秋晴れの午後、宮津大輔さんからのご提案により青山散策が開催されました。集ったのは、MAMCメンバー、森美術館理事長の森佳子、チーフ・キュレーターの片岡真実 ほか、総勢14名。楽しいお話とともに、コム・デ・ギャルソン青山店、ギャラリーや書店を巡った一日の様子をレポートします。


とてもアクティブな宮津さんのプレゼンテーションに引き込まれる

◆ファッションとアートのコラボ:コム・デ・ギャルソン青山店
待ち合わせ場所は「コム・デ・ギャルソン青山店」。店内では森美術館でも2009年に個展を開催した中国のコンセプチュアル・アーティスト、アイ・ウェイウェイとのコラボレーションによるTシャツの販売が行われていました。コム・デ・ギャルソンのTシャツがなんと2000円。バーゲンセールのように山積みになっていますが、そのディスプレー用のワゴンまでもが、アイ・ウェイウェイのデザインによるものだそうです。Tシャツのデザインは実に様々で、アイ・ウェイウェイのアトリエの住所がデザイン化されたものや本人の顔写真から、昨年受けた脳の大手術の際の頭部CTスキャン画像までさまざま。皆それぞれお気に入りの一枚を選びました(五枚買った人も)。そして壁には「アートは関わることです。関わる事は伝えることです。伝える事はアートです。」の文字。今回のアート散策をはじめ、美術館やMAMCメンバーの活動を考えさせられる絶好のスタートです。

そして、ここで絶対に忘れてはならないのは、店内の照明として使われている東恩納裕一のシャンデリア。森美術館でも「六本木クロッシング2007展」で同じシリーズのシャンデリアが展示されました。ギャラリーに展示すると"作品"ですが、ここでは実用的な"インテリア"。置かれる環境によって見え方が違うのは、とても興味深いことです。
この日、宮津さんが着ていたジャケットはコム・デ・ギャルソンのもの。シンプルなシルエットに施された大胆なペインティングがとても個性的でした。宮津さんは、海外でイベントやパーティーに出席する際にも、コム・デ・ギャルソンを着ることが多いそうです。「コム・デ・ギャルソンを着ていると、和服を着ているのと同じくらい注目されるし、そこから会話が弾むこともあるんですよ。」と、装いも交流のきっかけのひとつにしてしまう、宮津さんのコミュニケーション術の一端を垣間見ることができました。


みんなで青山をそぞろ歩く

◆サプライズプレゼント!:もはやアイ・ウェイウェイ作品集のような新作パンフレット
ひとしきりファッションを楽しんだ後は、裏路地を少し歩いたところにある「フラミンゴ・カフェ」で、ティータイム。ここで宮津さんからサプライズが!
実はこの日、宮津さんとコム・デ・ギャルソン青山店のご厚意で、「2010-2011秋冬コレクション」のパンフレットが全員分用意されていました。通常は顧客だけに配布されるもので、店舗では配らないそうです。特に今シーズンのものは、表紙も中味も全てアイ・ウェイウェイの作品画像で出来ており、パンフレットの域を超えて、むしろ作品集として永く手元に置きたくなる一冊でした。

思いがけず素敵なプレゼントを手にした皆の顔には笑顔が広がり、おしゃべりも一気に盛り上がりました。以前から交流の深い宮津さんと片岡キュレーターの会話に、参加者もどんどん加わっていきます。海外のアートのこと、日本のアートのこと、これから日本人として自国の文化をどう考えるか・・・など、もしこの後の予定が決まっていなければ、いつまででも話していられるような雰囲気となりました。


以前から親交の深い宮津大輔さんと片岡キュレーター

◆大先輩が語るコレクションの醍醐味とは?:「Roni Horn展」(Rat Hole Gallery)
ティータイムですっかり打ち解けた一行は、次にRat Hole Galleryの「Roni Horn展」へ向かいました。ギャラリーに入った途端に目を奪われたのは、アルミで出来た角材のようなフォルムの立体に、白いプラスティックでエミリー・ディッキンソンの詩の一節が嵌め込まれた作品。その美しさに思わず「欲しい!」と声があがり、「参考までに・・・」と片岡キュレーターがギャラリストに価格を聞いてみると・・・なんと、一番小さな作品でも軽く1000万円超!とても簡単に買えるような金額ではありません。

ここで宮津さんがコレクター大先輩として一言。「何も、いきなりRoni Hornを買う必要はありません。この人はもう既に大者ですから(笑)。それに高いものを買える人をコレクターと呼ぶわけでもない。自分の手が届く範囲で、本当に欲しいと思ったものを手に入れるのが醍醐味です。例えばね・・・」と、開いて見せてくださったのは、たった今このRat Hole Galleryで受け取ったばかりの、笹岡啓子の小さな作品集。裏表紙の内側にはきちんと薄紙が掛けられた写真作品が付いたプリント付きエディションで、シリアルナンバーと作家のサインも入っています。「これは数千円で手に入る本ですが、こうして写真の部分を見れば立派な"作品"と考えることも出来ます。こういうのも楽しいでしょう。」手に入れたばかりの小さな本を、とても大切そうに扱う宮津さんの姿からは、アートへの思いが伝わってきます。片岡キュレーターからも「まず、ひとつ作品を手に入れてみること。コレクションの世界はそこから広がると思います。最初の一歩を踏み出すと、次の一歩が出やすくなる。本当に好きなもの、自分に合った作品に出会うまで、何度か思い通りにいかない経験をするかもしれないけれど、それもコレクションを楽しむためには必要なプロセスなのかもしれませんね。」との言葉があり、全員が深く納得。
どうやら、それぞれの秘めたる"コレクター魂"に火がついてしまったようです。

◆本屋で楽しむアート:ユトレヒト
最後に立ち寄ったのは「ユトレヒト」という書店でした。アート関連の洋書や、限定版の美術書などが、扉付きの書棚の中にギッシリ詰まっていて、アート好きなら何時間でも過ごせそうな本屋さんです。今見てきたばかりのRoni Hornの作品集もありました。


ユトレヒトには興味深い本が所狭しと・・・

お店の奥にはちょっとしたスペースがあり、この日はとても可愛いらしい「ウェディングケーキ」がいくつも展示されていました。店内いっぱいに漂う甘い香りの中、思い思いの本を開いてみるのはとても楽しい時間でした。

こうして約3時間の散策コースは終了。宮津さんからの「また、みんなと一緒にギャラリーを訪問する企画を提案しますので、どうぞお楽しみに!」という嬉しい一言で、青山での楽しいひとときは締めくくられました。
今回、素晴らしい企画を立ててくださった宮津さん、本当にありがとうございました。

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カテゴリー:03.活動レポート
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