前回に引き続き、来館者の方から寄せられた疑問・質問に、キュレーターがお答えします。
Q.《レントゲン機》について:
《レントゲン機》
1910年頃、ドイツ
Science Museum, London
――下肢部にある黒いものは何の装置ですか? 詳しい仕組みを教えてください。
A.木製の部分に人が横たわり、回りの曲線に沿ってその木製部分を電動で回転させて使用する仕組みです。木製部分の上にある盤に、レントゲンフィルムが設置されます。
Q.アニー・キャトレル《五感》について:
――樹脂の中には、どのようにして泡のような固体を入れたのでしょうか、制作工程を教えてください。
A.ラピッド・プロトタイピングという、スキャンデータを三次元の立体構造物に作り上げるシステムを用いています。作品の三次元CADデータをスライスし、それを積み重ねていきながら、樹脂を入れ込み、完成させています。
Q.エドワルド・カッツ《第八日》について:
――タイトルにはどのような意味があるのでしょうか? 旧約聖書の天地創造が7日間なので、新たな創造=8日間ということでしょうか?
A.その通りです。7日目までが神が創造したこの世界だとして、第8日には、新しいテクノロジーを手に入れた人間が神に代わって創る世界、という意味が込められています。
Q.オロン・カッツ&イオナ・ズールの《組織培養&アート・プロジェクト》について:
《組織培養&アート・プロジェクト》
オロン・カッツ&イオナ・ズール(西オーストラリア大学シンバイオティカ主宰)
ヴィクティムレス・レザー:テクノサイエンス的「身体」で育てられた縫い目のないジャケットのプロトタイプ
2004年 作家蔵
――赤く着色した液体の詳細を教えてください。
A.赤い液体は、もともとは培地で、
・アミノ酸やグルコース(糖)などの栄養分
・ミネラル・ビタミン類
・細胞の成長を促す、成長因子と呼ばれる様々な蛋白質群(これを補うに牛の胎児からとった血清が入っています)
・酸性度(pH)を調節するための緩衝液
・細胞の浸透圧を保つための塩類
・酸性度をモニターするための色素(これが赤色の要因。現在オレンジ~黄色になっているのはアルカリ性に転じたため)
というのが主成分になります。
※アーティストのオロン・カッツが、この作品について語っています。
このように寄せられた質問をみてみると、現代アートはさまざまな表現手法で制作されているため、「どうやって作っているのか」が皆さんの一番知りたいところのようです。
今後もブログでは、こうした質問への回答をご紹介したいと思いますので、ぜひご期待ください。もちろん、監視員はその場でお答えできるよう、ますます頑張ります!
また、「医学と芸術展」公式カタログにも、作品の写真はもちろん、詳しい解説もございます。カタログは、デミアン・ハーストの作品が表紙を飾り、デザインにもスタッフがこだわってつくった自信作です。ミュージアムショップ、またはこちらからもお求めいただけます。
<関連リンク>
「医学と芸術展:生命(いのち)と愛の未来を探る」
会期:2009年11月28日(土)~2010年2月28日(日)