本展は、1960年代末から1980年代の終わりにかけて、バンコク、シンガポール、そしてマニラに存在した、3つの文化施設に焦点を当てたものです。1981年、フィリピン人アーティストでキュレーターのレイムンド・アルバノは、マニラの都市風景の急激な変化を「突然、顕わになって」と言い表しました。
1960年代末、開発主義(*1)のイデオロギーを背景とした経済成長への渇望に駆動され、東南アジアの中心地は急激に都市化し、近代的なメトロポリスへと姿を変えました。アーティストや建築家が重要な役割を果たし、こうした新しいビジョンは美術の世界においても実現しました。彼らはお互いにアイデアを交換し、抽象表現主義やコンセプチュアル・アートといった国際的な美術動向を自由に取り入れながら、東南アジア一帯に根づいた民族的・大衆的な伝統も作品に織り込んでいきました。そうすることで、人々にショックを与え、時に怖がらせ、驚かせ、アートについて、そしてそれが社会の中で果たす役割について考えさせようとしたのです。
本展では、3つの影響力のある文化施設、フィリピン文化センター(CCP)(1969年-、マニラ)、アルファ・ギャラリー(1971-1989年、シンガポール)、そしてピーラシー近代美術館(BIMA)(1974-1988年、バンコク)に焦点を当てることで、東南アジアの美術史における、この重要なパラダイム・シフトを検証します。
*1 国家における社会の発展や固有の文化の尊重ではなく、工業化による経済発展を第一義とする政治イデオロギー。