「リー・ミンウェイとその関係展」では、リーの制作活動における重要なキーワードである「つながり」や「関係性」を再考すべく、また制作の背景にある文脈を読み解くべく、11 人のアーティスト、宗教家、思想家の作品や言葉も併せて紹介しています。ブログ連載第5回では、久松真一、イヴ・クライン、ジョン・ケージの作品を取り上げます。
久松真一(1889~1980年)
《白隠の隻手の声は耳もなく手も無く舌もなくてこそきけ》
昭和時代
短冊
36.3 × 6 cm
所蔵:久松真一記念館、岐阜
哲学者、仏教学者。京都帝国大学で西田幾多郎に師事し、鈴木大拙から禅学の影響を受けました。「無相の自己(Formless Self)」という禅の思想を確立し、『東洋的無』をはじめ、『茶の精神』『禅と美術』など多数の著書を執筆し、仏教哲学者としてまた禅の求道者として、その91年の生涯を研究と禅の修行の中に生きました。茶人、書家としても長けており、久松が所有していた白隠の《隻手》について書かれた書が出品されています。
イヴ・クライン(1928~1962年)
イヴ・クラインは1950年代後半から60年代にかけて集中的に制作されたコンセプチュアルな作品やパフォーマンスを通し、宇宙を構成する第一物質(プリマテリア)の4要素のひとつ、「空気」を主要な素材として扱ったフランスのアーティストです。見えない領域や非物質性を知覚すること、それによって見いだされる価値を考えさせるさまざまな作品は、リー・ミンウェイの実践に通底する不可視の価値を喚起させます。
ジョン・ケージ(1912~1992年)
《R²3 (Where R=Ryoanji)》
1983年
ドライポイント
18 × 54 cm T.P., Ed. 25
川村龍俊氏蔵
©John Cage Trust
20世紀の音楽にもっとも大きな功績を残した作曲家のひとりであり、音楽に偶然性や不確定性を導入したことで知られています。その背景には古代中国の占いの書『易経』、鈴木大拙を通して知った禅など、東洋思想の影響があります。そこから生まれる音楽や美術の考え方は、日常生活にあるあらゆる音や行為に意識を向けるもので、リー・ミンウェイの価値観に通じるものがあります。
<関連リンク>
・「リー・ミンウェイとその関係展」作品紹介
(1)関係性、つながり、あいだについて考える
(2)歩く、食べる、眠る―日々の営みを再考する
(3)パーソナルな記憶から歴史、文化、社会のつながりを考える
(4)「参照作品」を読み解く:白隠/今北洪川/鈴木大拙
(5)「参照作品」を読み解く:久松真一/イヴ・クライン/ジョン・ケージ
(6)「参照作品」を読み解く:李禹煥/アラン・カプロー/リクリット・ティラヴァニ
(7)「参照作品」を読み解く:小沢 剛/田中功起
・スペシャル対談:リー・ミンウェイ×片岡真実
(1)“参加するアート”とは?
(2)「ギフト」を贈ることもアートになる
(3)観客が参加することで、さらに豊かになるアート
・「リー・ミンウェイとその関係展:
参加するアート―見る、話す、贈る、書く、食べる、そして世界とつながる」
会期:2014年9月20日(土)-2015年1月4日(日)
・「MAMプロジェクト022:ヤコブ・キルケゴール」
会期:2014年9月20日(土)-2015年1月4日(日)