観客とアート、観客どうしがアートを通じてさまざまに関わり合うことが、リー・ミンウェイのプロジェクトの特徴といえます。ブログ連載第3回では、「つながり」について考るセクション3の作品を解説します。
Section 3:パーソナルな記憶から歴史、文化、社会のつながりを考える
リー・ミンウェイやプロジェクトへ参加する方々の個人的な記憶や体験を通して、日本と台湾の関係、社会の大きな変化や歴史に残る出来事が、個人にもたらす影響や関係について考えます。また、パーソナルな記憶の喚起といった観点から、日本で学んだ彼の祖父母の写真をはじめとするリーの家族写真も展示しています。
(左)祖母、ワン・ユー(王氏有)の東京女子医学専門学校時代の学級写真、1930年代
(右)祖母の病院前(台中)での家族写真。前列右から2番目がリー・ミンウェイ、1960年代
アーティスト本人、またはホストが見知らぬ人を一対一の食事に招き、対話をするなかで関係性を築く。展覧会の観客は、その記録の一部を映像で共有します。
《プロジェクト・手紙をつづる》
1998年
展示風景:シカゴ・カルチュラル・センター、2007年
撮影:Anita Kan
静謐な空間のなかで、観客は大切な人に言えなかった謝罪や感謝の言葉を手紙に託します。宛先が記され、封がされていれば投函され、そうでなければ他の観客に公開されます。
《砂のゲルニカ》
2006年
展示風景:シカゴ・カルチュラル・センター、2007年
所蔵:財團法人榮嘉文化藝術基金會、新竹、台湾
撮影:Anita Kan
スペイン内戦中の空爆を題材に描かれたピカソの《ゲルニカ》を砂絵で描いたリー・ミンウェイの《砂のゲルニカ》を展示し、その上を観客が歩く、1日限りのパフォーマンスを実施(11月16日にパフォーマンスは終了)。徐々に消失してゆく砂絵のイメージは、この世の無常観を伝えます。
《プロジェクト・リビングルーム》
2000年
展示風景:センター・フォー・チャイニーズ・コンテンポラリー・アート、マンチェスター、2013年
撮影:Kevin Ho
くつろぎながら、六本木の街の記憶についての話を聞くリビングルーム。アーティストのリー・ミンウェイ、森美術館館長や、公募参加のボランティアがホストとなり、持参した品や写真を用いて自らの思い出やエピソードを来館者と共有します。
<関連リンク>
・「リー・ミンウェイとその関係展」作品紹介
(1)関係性、つながり、あいだについて考える
(2)歩く、食べる、眠る―日々の営みを再考する
(3)パーソナルな記憶から歴史、文化、社会のつながりを考える
(4)「参照作品」を読み解く:白隠/今北洪川/鈴木大拙
(5)「参照作品」を読み解く:久松真一/イヴ・クライン/ジョン・ケージ
(6)「参照作品」を読み解く:李禹煥/アラン・カプロー/リクリット・ティラヴァニ
(7)「参照作品」を読み解く:小沢 剛/田中功起
・スペシャル対談:リー・ミンウェイ×片岡真実
(1)“参加するアート”とは?
(2)「ギフト」を贈ることもアートになる
(3)観客が参加することで、さらに豊かになるアート
・「リー・ミンウェイとその関係展:
参加するアート―見る、話す、贈る、書く、食べる、そして世界とつながる」
会期:2014年9月20日(土)-2015年1月4日(日)
・「MAMプロジェクト022:ヤコブ・キルケゴール」
会期:2014年9月20日(土)-2015年1月4日(日)