異なる文化、あるいは現実と想像の世界の境界を往来する子どもの性質に焦点を当てる「ゴー・ビトゥイーンズ展」は、森美術館にて、8/31(日)まで開催中です。第3回となる連載“1分で読む!「ゴー・ビトゥイーンズ展」”では、ストーリー・コーの《Q&A》を取り上げます。
ストーリー・コー
《Q&A》
2010年
アニメーション
4分
Courtesy: StoryCorps
ストーリー・コー
ラジオプロデューサーのデヴィッド・アイセイによってニューヨークに設立された「ストーリー・コー」は、さまざまな生い立ちの家族や友人の対話を記録し、そのストーリーを分かち合おうとするプロジェクトです。現在までに9万人以上の参加による4万5,000件以上の対話を収集し、ラジオ局やインターネットを通じて発信されています。
本展で紹介している、2本のアニメーション化された対話のうちのひとつ《Q&A》は、アスペルガー症候群の中学1年生の息子と母親との会話の記録です。人との接し方がわからずに悩んでいる息子は、自分と妹を比較して「妹は誰からも好かれてきたよね。天使みたいにかわいいから。」と話します。それに対して母親は「わかってもらうまでに少し時間がかかるかもしれないけれど、あなたには数人のとても良い友達がいるでしょ。それが大事なこと。」と答えます。「ぼくはお母さんの期待に答えられた?」という質問に対しては、「期待以上よ。いわゆる育児本に書いてある子どもとは違うあなただったから、より独創性を働かせて、親として成長できたの。あなたが息子でいてくれて、本当に幸運だった。」と答える母。
困難に背を向けず、真摯に向き合って支え合う親子の姿は、見る人に勇気を与えてくれます。「みんなと同じ」である必要はない。身近な人の信頼と励みによって、多様性は大きな力となるのです。
文:荒木夏実(森美術館キュレーター)
<関連リンク>
・「ゴー・ビトゥイーンズ展:こどもを通して見る世界」
会期:2014年5月31日(土)-8月31日(日)
・1分で読む!「ゴー・ビトゥイーンズ展」
(1)ジャン・オー《パパとわたし:No.29》
(2)金仁淑《ひいおばあちゃんと私》
(3)ストーリー・コー《Q&A》
(4)梅佳代《女子中学生》
(5)スヘール・ナッファール&ジャクリーン・リーム・サッローム《さあ、月へ》
(6)リネカ・ダイクストラ 《女の人が泣いています(泣く女)》