2014年8月 5日(火)

梅佳代《女子中学生》
1分で読む!「ゴー・ビトゥイーンズ展」(4)

現在、森美術館にて開催中の「ゴー・ビトゥイーンズ展」は、異なる文化の間、現実と想像の世界の間など、さまざまな境界を自由に行き来する子どもの性質に注目し、子どもの視点を通して世界を展望しようとする試みです。本連載では“1分で読む!「ゴー・ビトゥイーンズ展」”と題して、担当キュレーターが解説します。


梅佳代
《女子中学生》
2000-2001年
インクジェット・プリント

梅佳代
狭い部屋の中でさまざまな「痴態」を繰り広げる少女たち。セーラー服や体操着姿の彼女たちは、タイトルが示すとおり「女子中学生」です。キッチンのシンクに入り込み、スカートをまくりあげ、ブラジャーで目隠しし、出産シーンを真似るなど、集団心理によって悪ふざけはエスカレートしていきます。

それにしてもこの親密な雰囲気はどこから来るのでしょうか。展覧会を見た小学生からは「友達どうしで写真を撮っているんだと思う」という意見がありました。撮影時、カメラをもつ梅佳代自身がまだ10代で、この部屋は彼女が住んでいた寮の一室でした。撮る人と撮られる人の距離が、物理的にも心理的にも近い状況だったからこそ写すことのできた、奇跡の写真といえるかもしれません。被写体に接近し、挑発し、その欲望やファンタジーを引き出す手腕は見事です。

少女たちが見せる性への関心には、あっけらかんとした明るさが伴っています。大人と子どもの境界を行き来しながら、すぐに子どもの世界に戻ることのできる、ギリギリの年代だからかもしれません。危うさと無邪気さが同居する、思春期の少女たちのはじけるようなエネルギーが感じられます。

文:荒木夏実(森美術館キュレーター)
 

<関連リンク>

「ゴー・ビトゥイーンズ展:こどもを通して見る世界」
会期:2014年5月31日(土)-8月31日(日)

・1分で読む!「ゴー・ビトゥイーンズ展」
(1)ジャン・オー《パパとわたし:No.29》
(2)金仁淑《ひいおばあちゃんと私》
(3)ストーリー・コー《Q&A》
(4)梅佳代《女子中学生》
(5)スヘール・ナッファール&ジャクリーン・リーム・サッローム《さあ、月へ》
(6)リネカ・ダイクストラ 《女の人が泣いています(泣く女)》

カテゴリー:01.MAMオピニオン
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