六本木ヒルズ・森美術館10周年記念展「LOVE展:アートにみる愛のかたち」関連プログラムとして出展アーティストである津村耕佑さんによるワークショップ「愛着発見道場」が6月1日に開催されました。
なぜ、私たちは、あるモノに愛着を抱き、あるモノに飽きてしまうのでしょうか。「愛着」とはそのモノに常に新しさを見出すこと、と語る津村さんとともに、モノとファッション、そして愛との関係について考えました。
津村耕佑さんは「非常時に最後に人を守るのは服である」というコンセプトのもと、ブランド「FINAL HOME」を考案したファッション・デザイナー。「FINAL HOME」のナイロン製のコートには多数のポケットがあり、新聞紙を入れて防寒着に、食料、医療品、ペットボトルを入れて避難着に、さらにお気に入りの品をつめこめば安心感や癒しを纏うことができます。近年、津村さんは、「つながり」をテーマに活動の幅を広げています。
ワ-クショップについて説明する津村さん。
今回のワークショップは、身の回りにある「愛」をみつけることがテーマです。
参加者は「いつも持っていて気持ちがウキウキするモノ」、「最近飽きてしまい、部屋の隅に放置されているモノ」の2つを持参しました。はじめに、なぜ好きなのか、どうして飽きてしまったのかという理由とともにモノを紹介します。アイテムは時計、カメラ、ノート、スケジュ-ル帳、景品、CD、など。持参した理由は、三者三様です。
参加者が持参した2つのモノの好きな理由、飽きた理由を語ります。
いよいよ飽きてしまったモノに装飾を施し、再び愛を注入する作業開始です。モノがどのように生まれ変わるのか、期待が高まります。
様々な素材を使います。
一度は愛着があったアイテムですから、作業に熱が入ります。
予定時間を延長して作業が続きます。
愛を注入する作業が終わったら、作品を展示ケ-スに入れて撮影です。「愛」が入ったか、客観的な目で見てみます。ケースに入れるだけで、特別なモノに変わるから不思議です。
好きな作家なのに、なぜか途中で読むのをやめてしまった本。
ファストフードの子供用セットの景品。何度も通って手に入れたが、時間が経つと気持ちが薄れてしまった。
幼い頃、ずっと一緒にいた犬のぬいぐるみ。
展示についてアドバイスをする津村さん。
もうひとつ、斬新な発想で準備されたケースがありました。それは、自分を愛せなくなった人のために用意された、自分自身が中に入る展示ケースです。津村さんの愛と、ユニ-クな一面が伝わってくるアイデアです。
幸い、本来の目的でそのケースの中に入った人はいませんでしたが、普段、なかなか入ることができない展示ケ-スなので、興味がある人に入ってもらいました。
制作したメガネの作品と一緒に。
津村さんがケースに入ったとたんに、撮影会が始まりました。
できあがった作品と一緒に集合写真。
「普段教えている美大生とは異なる新しい発見を、皆さんからいただきました」と津村さん。そして最後に「愛を注入しました」の言葉で、ワークショプは終了しました。
津村さんの日々の制作に対する姿勢やモノに対しての考え方が皆さんに届き、自分の持ち物に対する愛着を再発見できました。
7月13日には、津村さんによる子ども向けワ-クショップも行われます。(申し込みは終了しています)
1959年 | 埼玉県生まれ。 |
1982年 | 第52回装苑賞受賞。 |
1983年 | 三宅デザイン事務所に入社。 |
1992年 | 第21回現代日本美術展準大賞受賞。 |
1994年 | FINAL HOMEを設立。 パリコレクションと東京コレクションに初参加。 第12回毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞受賞。 |
2001年 | 第3回織部賞受賞。 |
2008年より武蔵野美術大学空間演出デザイン学科教授。 |
文:横山佳世子(森美術館学芸部パブリックプログラム コーディネ-タ-)
撮影:御厨慎一郎
<関連リンク>
・六本木ヒルズ・森美術館10周年記念展
「LOVE展:アートにみる愛のかたち-シャガールから草間彌生、初音ミクまで」
2013年4月26日(金)-9月1日(日)
・7組のアーティストたちによる愛のかたち。
(前編) 愛は壊れやすいもの、でも期待せずにはいられない―チャン・エンツー
(後編) 人をどう扱うか、それが国や社会への物差しになる―アルフレド・ジャー