2012年5月 8日(火)

パブリックプログラム(教育普及活動)のアクティビティ紹介
先生のためのツアー:「イ・ブル展」をどう鑑賞授業に生かすか?

森美術館では「先生のためのツアー」という、先生に対し、美術館のご案内とともに、展覧会を授業で活用する方法について一緒に考えるプログラムを行っています。
今回はその様子をご紹介します。
 

「イ・ブル展を小学生と鑑賞する際、どのような点に注目させるといいでしょう?」「イ・ブルの世界イメージの把握と造形表現との関わりをどう考えますか?」 これらは、「先生のためのツアー」(2月23日)での、キュレーターと先生方との対話の一部です。先生方はガイダンスのあと、チーフ・キュレーター片岡真実の解説により「イ・ブル展」を鑑賞。イ・ブルの思考や創造性溢れる造形世界に圧倒されるように集中して鑑賞し、こどもたちがどのように作品と出会うか、各々のイメージを膨らませていらした様子でした。質疑応答では、授業に取り入れる方法について共に考えました。当館エデュケーターが作成した「鑑賞のポイント」も配布。展覧会主旨や章立てのポイントに加え、未就学児から小学校低学年、小学校中学年から中学生、高校生以上と大きく3つの段階別に切り口(ヒント)を掲載しました。イ・ブル展から読み取れる様々なキーワードを、「テーマ」と「素材」の両面から提示もしました。これらは美術館が発信し、授業シミュレーションにお役立て頂くための提案の一つです。


「イ・ブル展」の作品を熱心に鑑賞する先生方


先生用の「資料キット」。チラシや鑑賞ポイントなどをお渡しします。

森美術館は最先端の現代アートを紹介しています。これらの展覧会を学校教育に活用して頂くことは、次世代へアートという文化を繋げていくためにとても重要なことだと考えています。当館の学校プログラムは、対象が保育園、幼稚園、小・中学校、高校、大学、専門学校と幅広いことが特徴です。1つの展覧会につき約10から15校を対応していますが、その鑑賞方法はさまざま。小グループの対話型ギャラリートーク、ガイダンスや自由鑑賞、修学旅行のグループ学習など、学校の意向を鑑みながら相談のうえで決定しています。


担当キュレーターの解説を聞きながら、作品を360度から見たり、覗き込んだりする先生方


「イ・ブル展」担当キュレーター片岡真実と、質疑応答も行いました。

今回のツアーには図工美術だけではなく、国語や世界史の先生の参加もありました。美術展なのになぜ?と思われる方もいるかもしれません。事前に知らせて頂く「参加動機」には、イ・ブルが選び取る独特の素材や技法、身体性やイメージといった芸術的観点のほか、「韓国現代史の授業に芸術分野を取り入れたい」、「アジアの女性作家への興味」など、幅広い関心が寄せられました。
ある学校では中高生の国語授業に当館の展覧会鑑賞を取り入れて、今年で5年目になります。現代アートを通して今の社会を見る、作家の思考や鋭い感性に出会い刺激を得る、感じた事を言葉につむぐといった作業は、まさに国語で育みたい力と共通するものなのでしょう。
次回の「先生のためのツアー」は、「アラブ・エクスプレス展:アラブ美術の今を知る」(会期:6月16日‐10月28日)の会期中に開催予定です。これからも数多くの先生方のご参加をお待ちしています。

文:白濱 恵里子(森美術館学芸部パブリックプログラム エデュケーター)
 

<関連リンク>

パブリックプログラムとは

「イ・ブル展:私からあなたへ、私たちだけに」
会期:2012年2月4日(土)~5月27日(日)

設営風景「イ・ブル展:私からあなたへ、私たちだけに」(flickr)

「イ・ブル展」アーティストトーク2012/2/4(flickr)

展示風景「イ・ブル展:私からあなたへ、私たちだけに」(flickr)

「イ・ブル展」はこうしてつくられた!
普段見られない舞台裏に潜入したフォトレポートをご紹介します。(Blog)

カテゴリー:03.活動レポート
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