日本のモダニズム建築の基盤ともいうべき建築理論「メタボリズム」。2011年夏の注目展覧会は、戦後の復興期から高度経済成長期に壮大な未来都市の像を描き、多くの実験的な建築を実現させたメタボリズム運動に焦点を当てた「メタボリズム展」です。そしてMAMプロジェクト015では、統制された文字が生き物のようにうごめきながら、壁や床を埋め尽くす映像作品などを特徴とする香港在住作家、ツァン・キンワーをご紹介します。
◆メタボリズム展
丹下健三の影響を受けた建築評論家の川添登、建築家の大高正人、菊竹清訓、黒川紀章、槇文彦、デザイナーの栄久庵憲司らが提唱した、建築理論「メタボリズム」。生物学用語では「新陳代謝」を意味する言葉ですが、「生物が代謝を繰り返しながら成長していくように建築や都市も有機的に変化できるようデザインされるべきである」として、1960年に日本で開催された世界デザイン会議において、最初の宣言として発表されました。 この理論は、戦後の復興期から高度経済成長期に壮大な未来都市の像を描き、多くの実験的な建築を実現させただけでなく、今日の日本において国際的に活躍する優れた建築家、デザイナーを輩出する基盤ともなっており、今なお世界で最も知られている日本の建築理論です。
本展は、この建築理論「メタボリズム」に今日どのような意義があるのかを問いかける、世界で初めての展覧会。メタボリズム運動誕生の背景となった丹下健三の思想・事蹟と、1960年前代を中心としたメタボリストの活発な活動、そしてこの理論の成果と言える1970年の大阪万博までを資料、模型などで紹介します。また、当時の建築資料の遺失・散逸が問題となっている今日、この展覧会をきっかけとして貴重な現存資料を整理・蒐集し、将来に残すことも本展の重要な意義と考えています。
主催:森美術館、UIA2011TOKYO
専門委員:磯崎 新、栄久庵憲司、大高正人、川添 登、菊竹清訓、藤森照信、槇 文彦、八束はじめ、ほか(※五十音順)
企画:森美術館、メタボリズム研究会
ツァン・キンワー《第二の封印-前進を阻むものすべては汝の糧となる》
2009年
リヨン、ラ・シュクリエールでの展示風景
◆MAM プロジェクト015:ツァン・キンワー
美しい壁紙のように見える文字のインスタレーションや、統制された文字が生き物のようにうごめきながら壁や床を埋め尽くす映像作品などを特徴とする、ツァン・キンワー。1976年に中国に生まれ、香港に移民後、香港を起点に日本や韓国などのアジア各国や欧米諸国で精力的に個展やグループ展覧会などの活動をしています。
2007年には東京TDC賞を受賞しています。
ツァンの作品において素材として扱われる文字は、通常の伝達手段としての役割とは全く異なる表情を見せます。エレガントな模様の中に潜む挑発的な言葉や、有機的な動きと圧倒的な量で迫る文字の群れは、見る者の感覚に不意打ちをかけてくるでしょう。文字の新たな魅力を体感させる装置を通して、表面には見えない意味の深みや多義性をじわじわと伝えます。
企画:荒木夏実(森美術館キュレーター)
■上記展覧会の会期
2011年7月23日[土] − 11月6日[日](予定)森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
《次回 第3回 11月からは「イ・ブル展」とシンガポールで多彩に活動するホー・ツーニェン(3) へ続く》
<関連リンク>
・【速報】2011年度展覧会情報(全3回)
第1回 3月からは「フレンチ・ウィンドウ展」とベルリンを拠点に活躍する田口行広(1)
第2回 7月からは「メタボリズム展」と香港の気鋭アーティスト ツァン・キンワー(2)
第3回 11月からは「イ・ブル展」とシンガポールで多彩に活動するホー・ツーニェン(3)