2010年10月 5日(火)

新しいアートとの出会い MAMC特別企画「あいちトリエンナーレ2010特別観賞ツアー」レポート

2010年9月4日(土)、ツアーに参加した33名は、あいちトリエンナーレの4会場を約7時間半かけてパワフルに巡り、草間彌生をはじめとする多彩な作家の作品を鑑賞しました。MAMCメンバー対象の特別企画だったこともあり、参加者はとても意欲的。休憩時間は昼食とバス移動中のみとハードでしたが、「豊富な時間の中で観賞するよりも集中して作品を観ることができてよかった」という感想が出るほど充実した1日となったようです。


あいちトリエンナーレのメインビジュアルでもある、草間彌生の《真夜中に咲く花》

最高気温38度という猛暑にもめげず、参加者は元気一杯で名古屋駅前に集結。「早く観たい!」という意欲の現れか、1人の遅刻者もなく、朝10時の時間通りにツアーはスタートしました。会場までのバスの中で、今回のツアー隊長を務める森美術館館長の南條史生が、「あいちトリエンナーレ」はどれ程大規模な取り組みであるか、その想像を絶する予算などについて説明。トリエンナーレに向けた行政や企業の期待の高さを知ることで、参加者のテンションはますます高まったようでした。


愛知芸術文化センターに向かう一行

愛知芸術文化センターに到着
入口で出迎えてくれたのは草間彌生の水玉で埋め尽くされたトヨタのプリウス(これと同様のプリウスは5台あり、内3台は開催期間中に会場間のシャトルとして活躍するそう)。いきなりのビッグネームの登場で、早速参加者のカメラが大活躍です。そして今回のツアーの案内役である事務局の岡田氏が登場。「いざ、展示会場へ!」と勢い込んだら、案内されたのは賑わう人の波とは逆方向にあるレクチャールームでした。「展示会場では1人ひとりが自分のペースで鑑賞できるように」との配慮から、事前にスライドレクチャーの時間が設けられました。まずは芸術監督の建畠晢氏より全体のコンセプトの紹介があり、続いてキュレーターの拝戸雅彦氏より具体的な作品の解説がありました。展示の全体像がつかめたところで、いよいよ展示会場へ移動です。

会場に入ってすぐ一行の足が思わず止まったのは、広いギャラリーの壁の四方を取り囲むように展示された蔡國強(ツァイ・グオチャン)の作品群。火薬による焼け焦げだけで描かれたとは思えないほど、豊かな色彩を感じる作品に驚きの声が上がり、参加者は近寄ったり離れたりしながら細部まで鑑賞していました。続く作品群には、過去に森美術館で展示したこともあるヘマ・ウパディヤイチャロー・インディア展出展)や、志賀理江子六本木クロッシング2010展出展)、そしてもちろん草間彌生の《真夜中に咲く花》などがありました。こうして1時間15分の鑑賞タイムは飛ぶように過ぎていきました。


ヘマ・ウパディヤイの作品

ここでちょうど12時となり、食事&休憩をとりました。この後、炎天下の長者町会場でバテないようにエネルギーの補給です。食事中も参加者同士の会話はやはりアート。それぞれにこの夏のアート体験談を披露したり、これから行く予定のアートイベント情報を交換したりと、大いに盛り上がっていました。


食事中も、やはり話題はアートで盛り上がります

いよいよ長者町会場
マップを片手に町中を歩き回るのも、あいちトリエンナーレの醍醐味のひとつ。エリア内ではピンクのTシャツを着たボランティア・スタッフが、鑑賞者を笑顔でサポートしていました。この猛暑ではさぞかし重労働だったに違いありませんが、お蔭で道に迷うこともなく、目当ての会場を探し当てることが出来ました。

まず向かったのは「万勝S館」。ここで出展作家の市川武史さんが我々の到着を待っていてくれました。彼の作品《オーロラ》は、六本木アートナイト2010では天井近くの高い位置に展示されましたが、ここでは壁を黒く塗った部屋の中に3重のオーロラが低く展示されていたので、鑑賞者は自由にオーロラの中に入っていけました。全て手描きで仕上げられたオーロラの美しさは、実物を間近で観て初めてわかるもの。しかし作品の荘厳さとは相反して、ご本人は大変気さくな方でした。「この3重のオーロラは、中心部分から『小ロラ』『中ロラ』『大ロラ』と呼んでいます」と、参加者の笑いを誘う一幕も。アーティスト本人から制作の裏側を聞くことができ、アートファンにとってはとても嬉しいひとときになりました。


長者町にて記念撮影!メンバーならではの盛りだくさんの特典に笑顔のみなさん

その後は、各自で思い思いにエリア内を回遊。路地で参加者同士がバッタリ会うと素早く情報交換をし、またそれぞれの道へ。熱中症の心配などどこ吹く風・・・というパワフルな参加者にすっかり圧倒された長者町会場でした。

次に向かったのは納屋橋会場
この会場は映像作品が中心。ヤン・フードンの作品は、残念ながら機材トラブルのため観ることができませんでしたが、その代わりに多くの参加者が競って体験したのは、梅田宏明による"目を閉じたままでモノクロとカラーの光と音を感じる"というインスタレーション。初めての体験を求めて、待合室には人が溢れるほどの人気ぶりでした。他にも小泉明郎小金沢健人など、森美術館でも馴染みの深い作家の作品が多く上映されていました。

最後に訪れたのは名古屋市美術館
こちらの会場でもキュレーターの深谷克典氏から全体の説明を受けた後、展示会場へ向かいました。会場への移動途中、作品が見えないうちから感じたのは辺りに漂うお香のいい薫り。そして床一面に敷き詰められた砂のようなお香による作品、オー・インファンの《Where a Man Meets Man》が見えてきました。お香の表面には型押しされたような文字が浮き上がっていて、その文字に沿って火が進みます。この作家は、「一定期間に進行するプロジェクト」として作品を発表することで知られています。他にもギャラリーを血管のようなチューブで埋め尽くした塩田千春の《不在と対話》や、都市における鳥と人間の関係性を描いたラクウェル・オーメラのユーモア溢れる映像作品など、印象に残る作品が多くありました。


名古屋市美術館キュレーターの深谷克典氏に、レクチャーを受ける

今回の「あいちトリエンナーレ2010特別鑑賞ツアー」を通して、参加者の「新しいアートとの出会いを求める気持ち」に触れることができたのは、素晴らしい経験でした。ただ今回ひとつ残念だったのは、トリエンナーレでは多くのパフォーミングアーツが上演されているのですが、それを観ることができなかったこと。会期は10月31日までありますので、是非2度目の訪問をして、今度はパフォーマンスを中心に鑑賞してみてはいかがでしょうか?これから見に行く方は、ぜひ時間をたっぷり取って楽しんできてください!

<関連リンク>
「あいちトリエンナーレ2010」公式webサイト

街を巻き込む大規模国際展「あいちトリエンナーレ2010」に行こう!

森美術館flickr(フリッカー)
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カテゴリー:03.活動レポート
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