左からルディ、フィービー、ハーバート
7月25日(日)、MAMプロジェクトのために初来日したインドネシアのアーティストグループであるトロマラマ(フィービー・ベビーローズ、ハーバート・ハンス、ルディ・ハトゥメナ)によるアーティストトークが行われました。
新作を含む展示を終え、前日はコマ撮りアニメを制作する親子向けワークショップを行ったトロマラマの3人は、森美術館の環境にもすっかり慣れてリラックスした様子で作品について語ってくれました。
スライドを使って自作について語る
バンドゥン工科大学の学生だった3人が結成したグループに「トロマラマ」という名前がついたのは2006年。ミュージック・ヴィデオの制作を習うワークショップに参加して、セリンガイというヘビーメタル・バンドのミュージック・クリップ《戦いの狼》を作ったのがきっかけでした。ありきたりのヴィデオを作りたくなかった彼らが思いついたのは、400枚以上のベニヤの板に音楽にマッチするイメージを彫り、一枚一枚を撮影してコマ撮りアニメを作るという方法。そんな気が遠くなるような細かい作業を通して出来上がった前代未聞のヴィデオは、トロマラマの代表作となりました。しかし、この苦痛を伴う体験は彼らにとってはすっかり「トラウマ」に。何とそこから転じて「トロマラマ」というグループ名を思いついたのだそうです。
ところが次のミュージック・ヴィデオ《ザー・ザー・ズー》でもまた、懲りない3人は大量のボタンとビーズを使って細かい手作業による制作を行いました。色とりどりのボタンやビーズを息を殺して並べるときは、くしゃみもできません。3ヶ月の期間をかけて1,000コマのアニメを作り上げました。
《ティン*》では何百もの白い磁器製のマグカップや皿を使いました。繰り返しの生活に飽きた食器たちが、食器棚を抜け出して町へ繰り出し、大冒険するこの物語には、メンバーの就職によって一時期作家活動を中止していたときのトロマラマ自身の心境が反映されています。
司会を務めるキュレーターの荒木
トロマラマは、コマ撮りアニメという手法を使ってすべての物に「新たな命を吹き込みたい」と語ります。自分たち自身が紆余曲折を経てアーティストとして再生したように、ボタンやビーズ、食器などの身近な素材にも生まれ変わるチャンスを与えたい。平凡な素材と丁寧な手仕事を組み合わせることによって生まれるトロマラマの斬新なアートからは、世界のあらゆるものに向けられた優しいまなざしが感じられるのです。
森美術館キュレーター 荒木夏実
【トロマラマプロフィール】
インドネシアのバンドゥンを中心に活動する3 人組のアーティスト・ユニット。フィービー・ベビーローズ(1985年生まれ)、ハーバート・ハンス(1984年生まれ)、ルディ・ハトゥメナ(1984年生まれ)により、バンドゥン工科大学在学中の2004年に結成、2008年のシンガポール・ビエンナーレへの参加以来、国際的な注目を集める。MAMプロジェクト012:トロマラマでは、《戦いの狼》2006年、《ティン*》2008年、《ザー・ザー・ズー》2007年などの代表作に加え、新作も披露。
<関連リンク>
・「MAMプロジェクト012:トロマラマ展」
会期:2010年7月24日(土)~11月7日(日)