「村上隆の五百羅漢図展」では、本展のために手掛けた「727」などの代表的シリーズの最新作の数々が展示されています。作品紹介ブログ第4回は、絵画作品から2点、ご紹介します。
展示風景:「村上隆の五百羅漢図展」 森美術館、2015年
撮影:高山幸三
© Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
最新絵画シリーズ
村上隆は活動初期より、アニメ・マンガのキャラクターを日本絵画の伝統の流れで捉えようと試みています。約30メートルにおよぶ新作絵画《宇宙の深層部の森に蠢く命の図》は、自身が創作したキャラクターDOB君が平安時代の絵巻物《信貴山縁起(しぎさんえんぎ)》を想起させる雲に乗る初期の代表作《727》の最新版です。作家がこの20年間描いてきたキャラクターの数々や代表的な主題がひとつの流れとして合体した本作は、作家の「名作集」あるいは、「ベストアルバム」にたとえることが出来るでしょう。
人々はタイトルに作品の意味を見出そうとしますが、実はこの作品には両者の関連性はありません。村上は、鑑賞者がタイトルから別の想像をしてしまい作品を前に困惑する、つまり「作品理解への入り口に立たされ途方に暮れること」を望んでいます。彼にとっては、「現実から圧倒的に距離を取って鑑賞する事」が、芸術の重要な部分であると言います。
展示風景:「村上隆の五百羅漢図展」 森美術館、2015年
撮影:高山幸三
© Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
最新連作《円相》では、村上の自画像が右から左へ移行しながら徐々に消滅しています(下図参照)。絵画に対する先入観や自意識の否定から根源的な自由を導く術を、グラフィティアートや禅画の円相図に重ね合わせているようです。こうして、村上は、超越や悟りに関する伝統的な主題に立ち返ったり、古典や自身の画業を再訪・変容させながら、過去に新たな息を吹き込み、「絵画の延命を謀っているのだ」とうそぶくのです。
<関連リンク>
・「村上隆の五百羅漢図展」
会期:2015年10月31日(土)-2016年3月6日(日)
・「村上隆の五百羅漢図展」見どころ紹介!
・「村上隆の五百羅漢図展」作品紹介
(1)《五百羅漢図》——「青竜」「白虎」
(2)《五百羅漢図》——「玄武」「朱雀」
(3)《五百羅漢図》ができるまで
(4)最新絵画シリーズ
(5)《宇宙の産声》<
(6)DOB君、たんたん坊、ゲロタン
(7)[番外編]村上羅漢ロボ