《五百羅漢図》は、東日本大震災にいち早く支援の手を差し伸べてくれたカタールへの感謝をこめて震災の翌年に発表されました。ブログ連載第3回は本作のできるまでをご紹介します。
村上 隆 《五百羅漢図》制作風景
撮影:Aminaka Kenta
《五百羅漢図》ができるまで
本展では、全長100メートルにもなる大作《五百羅漢図》が日本初公開されています。
村上隆はこの世界最大級の絵画をどのように制作したのでしょうか。
限られた制作期間で絵画を仕上げるため、まず、村上は「スカウト・キャラバン」と呼ぶやり方で、全国の美術大学の学生から制作参加志望者を募りました。そして、彼らをチーム編成して、24時間シフトを組み、短期間で作品完成への制作体制を組み上げました。スタジオも50メートルのカンヴァスが並ぶように改装・拡張し、最終的に200人以上ものスタッフが携わりました。資料ファイルは100冊を超え、使用したシルクスクリーン版は4千枚以上になったといいます。
村上 隆
《五百羅漢図》[白虎]
2012年
展示風景:「村上隆の五百羅漢図展」 森美術館、2015年
撮影:高山幸三
© 2012 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
本作の制作は、狩野派のような歴史上の絵師集団を現代に蘇らせようと、村上が20年以上かけて練り上げてきた工房システムの集大成です。また一方では、80年代以降、アメリカを発端に現代美術業界に広がった、大作嗜好へのある種のパロディを大々的にやってのけた、村上芸術の集大成的な作品でもあります。
展覧会では、下絵、スタッフへの指示書、分担表やスケジュール表など、制作に使用された膨大な資料の一部を展示しています。また、壁面では《五百羅漢図》に描かれたモチーフの意味や出典を紹介しています。
<関連リンク>
・「村上隆の五百羅漢図展」
会期:2015年10月31日(土)-2016年3月6日(日)
・「村上隆の五百羅漢図展」見どころ紹介!
・「村上隆の五百羅漢図展」作品紹介
(1)《五百羅漢図》——「青竜」「白虎」
(2)《五百羅漢図》——「玄武」「朱雀」
(3)《五百羅漢図》ができるまで
(4)最新絵画シリーズ
(5)《宇宙の産声》
(6)DOB君、たんたん坊、ゲロタン
(7)[番外編]村上羅漢ロボ