8月31日(日)まで森美術館で好評開催中の「ゴー・ビトゥイーンズ展:こどもを通して見る世界」。世界各国の優れたアーティスト26組の作品に表れる子どものイメージを通して、政治、文化、家族など子どもを取り巻く環境と、彼らが直面する諸問題に目を向けます。
担当キュレーターが参加作品を解説する“1分で読む!「ゴー・ビトゥイーンズ展」”の連載第2回は金仁淑を紹介します。
金仁淑(キム・インスク)
《ひいおばあちゃんと私》
(「SAIESEO(サイエソ):はざまから」シリーズより)
2008年
デジタル
Cプリント
118×150cm
金仁淑
在日コリアン3世として大阪に生まれ育った金仁淑(キム・インスク)は、自らのコミュニティーを対象とした「SAIESEO(サイエソ):はざまから」という写真のシリーズを制作しています。在日コリアンの家庭を訪れて撮影した写真を見ると、部屋の作り、インテリア、衣装など、そこには日本とコリアが混在しており、ハイブリッドとしての在日コリアンの状況が感じられます。
現在ソウルを拠点とし、日韓を行き来しながら活動する金は、歴史や政治とは異なる視点から、より「等身大の在日コリアン」の姿を表現したかったと語ります。それゆえに、写真のサイズを大きくし、写っている人物とそれを見る人が実際に対峙するかのような効果を工夫しているのです。その写真からは、個人、家族、コミュニティー、民族の諸相が映し出されるとともに、変わらないものと変容していくものの両方が感じられます。
ソウルに住むことによって「日本語と韓国語両方で寝言を言うようになった」とうれしそうに語る金。今後いっそう多様化していく世界の中で、異なる文化と民族性を自身の中に併せ持つ金の視点は、より重要になっていくことでしょう。
文:荒木夏実(森美術館キュレーター)
<関連リンク>
・「ゴー・ビトゥイーンズ展:こどもを通して見る世界」
会期:2014年5月31日(土)-8月31日(日)
・1分で読む!「ゴー・ビトゥイーンズ展」
(1)ジャン・オー《パパとわたし:No.29》
(2)金仁淑《ひいおばあちゃんと私》
(3)ストーリー・コー《Q&A》
(4)梅佳代《女子中学生》
(5)スヘール・ナッファール&ジャクリーン・リーム・サッローム《さあ、月へ》
(6)リネカ・ダイクストラ 《女の人が泣いています(泣く女)》