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ディン・Q・レ氏ご逝去に寄せて

2024.4.16(火)

ベトナムの現代アート界を牽引してきたアーティスト、ディン・Q・レ氏(1968年ベトナム、ハーティエン生まれ)が2024年4月6日に急逝されました。心より哀悼の意を表します。逝去の報に触れ、多くの関係者がその喪失の大きさを語っていることからも、彼の貢献がベトナム、東南アジアだけでなく、広く現代アート界に浸透していたことを改めて実感しています。

森美術館では2015年に彼の過去最大規模の個展「ディン・Q・レ展:明日への記憶」を開催しました。その後も2017年「サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで」、2023年「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」に参加いただきました。また、個展に際して制作された新作を含む4点を森美術館コレクションとして収蔵しています。

ディン・Q・レはカンボジアとの国境付近、ベトナムのハーティエンに生まれ、10歳で家族とともに渡米。米国でアートを学んで1990年代にベトナムに帰国してからは、自身の芸術活動を通してベトナムの歴史を世界に発信することに留まらず、2007年にベトナムの現代アートを支援し、国際的なアートシーンと繋げる「サン・アート(Sàn Art)」を他のアーティストと共同で創設するなど、未来へのビジョンを見据えた意義深い活動を行ってきました。

彼が意志を持って持続してきたことは歴史の忘却や消去に対する芸術的抵抗です。アジア地域を繋ぐ現代美術館のひとつとして、ベトナムを中心とする現代アート・コミュニティとともにディン・Q・レ氏の遺志を継承し、過去を学ぶことを通して世界平和と人類の共存のために美術館活動を続けていく使命を改めて感じています。

2024年4月
森美術館
館長
片岡真実

ディン・Q・レ氏、森美術館にて(2015年)
ディン・Q・レ氏、森美術館にて(2015年)
撮影:御厨慎一郎
展示風景:「ディン・Q・レ:明日への記憶」森美術館、2015年
展示風景:「ディン・Q・レ:明日への記憶」森美術館、2015年
撮影:永禮 賢
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