南條館長と行く「国民文化祭・おおいた2018」MAMCツアー フォトレポート
2018.11.8(木)
10月13日(土)~15日(月)に、MAMCメンバーイベントとして南條史生・森美術館館長と行く「国民文化祭・おおいた2018」MAMCツアーを開催しました。ツアーの様子をフォトレポート形式にてお届けします。
今回のMAMCツアーは、「国民文化祭・おおいた2018」を訪れるにあたり、この芸術祭をプロデュースした「NPO法人BEPPU PROJECT」代表理事の山出淳也氏はじめスタッフの皆様に全面的にご協力いただきました。大分空港到着後、貸切りバスにて、大分県西部の日田(ひた)に向かいました。ツアーは、大巻伸嗣の個展からスタートしました。
「国民文化祭・おおいた2018」では、大分県が5つのエリアに分類され、日田は「水の森」エリアです。山々に囲まれ、多くの河川が流れ込む地域で、「水郷日田」として知られ、2017年の九州北部豪雨による水害に見舞われたことも記憶に新しい、まさしく水と共にある山紫水明の里です。
大巻伸嗣の個展「SUIKYO」では、その「水」をテーマに制作された2つのインスタレーション作品が展示されています。
1つ目の作品《座 盆地》は、改修した2階建ての旧料理屋全体が作品となっていて、真っ暗闇の中を進んでいきます。まるで胎内めぐりのよう。
建物の中には日田に古くから伝承される物も作品の一部として展示されています。
2つ目の作品《Liminal Air Space-Time SUIKYO》が展示されている「日田市総合文化施設AOSE」は、地元の子供たちが、勉強をしていたり、お友達と遊んでいたりと、地域の方々が利用している施設です。
次は由布院にあるCOMICO ART MUSEUMを訪れました。
美術館の建築は、MAMC名誉会員でもある隈研吾氏によるもの。村上隆、杉本博司と森美術館とも関係が深い作家の作品が展示されています
移動が長かった1日目はこれで終了。南條館長を囲んでの夕食会です。
2日目は、午前中に大分市に移動し、大分県立美術館へ。
こちらの建築は坂茂氏設計で、大分県産の杉の木や、日田市の天領石が使われているそうです。
久しぶりに晴れた週末だったようで、たくさんの家族連れのお客様が訪れていました。
大分県立美術館では、加藤康彦副館長に「日本モダンの精華 京都国立近代美術館コレクション」展をご案内いただきました。大分県出身の日本画家、福田平八郎の作品をはじめ、京都国立近代美術館に所蔵されている名品を鑑賞しました。
大分県立美術館のレストラン「café Charité」で地元の食材を使った美味しいランチをいただいた後、アニッシュ・カプーアの作品鑑賞のために、別府公園に向かいました。パブリックアート作品が2つと、国民文化祭のために建てた屋内展示場1カ所のなかに、8点の作品が展示されています。
そのうちの1つ、《Void Pavilion V》は、光を吸収する黒の塗料を使用した、観る人の想像力を掻き立てる作品です。その場で鑑賞した方全員の見え方、感じ方が違うのではないでしょうか。
この作品はスタッフでも触ることを許されておらず、雨が降ってしまったら、ミラーが曇ってしまうため、特殊な液体で高圧洗浄をするそうです。
山出氏は20歳のころに、アニッシュ・カプーアの作品を雑誌で見て、この人に会いたい!と思い立ってロンドンへ行かれたそう。現在のようにインターネットが普及されていない頃で、情報をなかなか得ることができず、結局スタジオを見つけられずに、会うことは叶わなかったそうです。
今回、そのアニッシュ・カプーアの作品を大分で展示することになり、30年越しの念願が叶いロンドンのアトリエで会い、その時の思いを伝えたそうです。
次は別府公園ほど近くの聴潮閣(ちょうちょうかく)へ。聴潮閣は、大分県を代表する財界人高橋欽哉の邸宅で、2015年12月まで「聴潮閣高橋記念館」また「佐藤渓美術館」として一般公開されていました。聴潮閣の高橋鴿子館長がMAMCメンバーということもあり、今回特別に開館してくださいました。
登録有形文化財に登録された素敵な近代和風建築の中には、佐藤渓(画家・詩人)の作品の数々が展示されています。
2日目の最後は一路、国東(くにさき)半島へ。森美術館で開催中の「カタストロフと美術のちから展」でも作品が展示されている宮島達男の《Hundred Life Houses》を鑑賞しました。
1泊2日の日程でご参加の方々とは空港でお別れをし、オプショナルツアーに参加するメンバーでケベス祭りに向かいました。ケベス祭りとは、毎年10月14日に「櫛来社(くしくしゃ)」(岩倉八幡社)で行われる火祭りです。
3日目、ケベス祭りの翌日も快晴。2014年に開催された国東半島芸術祭で展示された作品を見てまわりました。国東半島は中央にそびえる両子山(ふたごさん)の噴火によって6つの集落に分かれ、深い谷がへだてる集落間を行き来することが容易ではなかったため、それぞれ独自の文化が根付いていきました。
川俣正の作品《説教壇》がある岐部地区は戦国時代のキリシタン大名、大友宗麟の影響で、多くのキリシタンが暮らしていました。現在でも近くに小さな教会がありますが、信者は一家族のみとなってしまったそうです。
次に向かったのは千燈岳(せんどうだけ)。ここには、アントニー・ゴームリーの作品があります。
629キロもあるゴームリーの作品をこの岩場に設置できたのは、索道技術をもつ、地元のしいたけ農家さんのご協力のお陰だと、住職より設置秘話を伺いました。
最後に訪れたのは、並石ダム。ここには勅使川原三郎のガラスを用いた2つの作品《月の木》と《光の水滴》が展示されています。「国東半島芸術祭」が開催された当時の満月の夜、ここで野外パフォーマンスも行われています。
東京が雨の中、大分では3日間ともにお天気に恵まれた今年のMAMCツアー。大分のそれぞれの地域で育まれ、発展した文化や習慣、そしてその地域性を活かした作家の作品の数—ただアートを鑑賞するだけではなく、大分の文化に触れられたツアーとなりました。
さて、今年最後のMAMCイベントは「カタストロフと美術のちから展」でのMAMCナイトです。 どうぞお楽しみに!
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