足踏み式ミシンと国旗をつかった大型インスタレーション《ネイションズ(国家)》。本作にはどのような意味が込められているのでしょうか。
《ネイションズ(国家)》
2007/2017年
193台の足踏み式ミシン、アクリル、キャンバス
サイズ可変
展示風景:「N・S・ハルシャ展:チャーミングな旅」森美術館、2017年
撮影:椎木静寧
何段にも積まれた足踏み式ミシンには、国際連合に加盟している193カ国の国旗を描いた布が置かれています。マハートマー・ガーンディーは「インド」という国家を生みだしましたが、多言語、多宗教、多文化の国インドでは、「国家」の意味自体を問わなければならないとN・S・ハルシャは考えています。
本作《ネイションズ(国家)》は、ガーンディーのインド独立運動を象徴する糸車(チャルカ)と、工業化を象徴するミシンに着想を得たもので、足踏み式ミシンは、国家を成立させているのは人間のエネルギーや労働そのものだということも示唆しています。国旗のデザインは、小さな店で売られている子ども用の本を参考にしており、片面だけに描かれた国旗は、国家と言う概念の空虚さを示しているようにも見えます。ハルシャは2000年代後半以降、欧米とインドだけでなく、日本や中国などの絵画を参照しながら床絵や壁画などを描き、絵画の新たな可能性を模索してきました。《ネイションズ(国家)》もまた、「絵画」とは何かについても問い掛けているようです。
<関連リンク>
・N・S・ハルシャ展:チャーミングな旅
会期:2017年2月4日(土)-2017年6月11日(日)
・N・S・ハルシャと巡る“チャーミングな旅”作品紹介
(1)《私たちは来て、私たちは食べ、私たちは眠る》
(2)「チャーミングな国家」シリーズ
(3)《ここに演説をしに来て》
(4)《空を見つめる人びと》
(5)《ネイションズ(国家)》
(6)《レフトオーバーズ(残りもの)》
(7)《未来》
(8)《ふたたび生まれ、ふたたび死ぬ》
(9)《マタ―》