志村信裕は、山口県の離島で飼育される牛をあつかった映像作品を「六本木クロッシング2016展」に出展しています。アーティスト&作品紹介ブログ連載第5回では本作をご紹介します。
活動拠点を横浜から山口に移して3年を過ごした志村信裕は、山口県の離島、見島で飼育される牛に焦点を当てた8ミリフィルムの映像作品《見島牛(みしまうし)》(2015)を制作しました。
外国種の影響を受けていない純粋な和牛として天然記念物に指定され、保護されている見島牛は、かつては農耕用に使われていました。映像では、牛の姿やのどかな島の風景と、牛との思い出を語る農民の声とが重ね合わされています。現代の日本のできごとを撮っているにも関わらず、白黒の映像と農民の独特の方言が相まって、見る者は場所と時間の感覚が曖昧になっていきます。「未来から現在をノスタルジックにふり返ってみたかった」と志村は語っています。グローバリズムから取り残されたかのように見える風景から、失われたものと不変なものの両方が浮かび上がってくるのです。
《見島牛》
2015年
シングルチャンネル・ビデオ(8ミリ白黒フィルムをビデオに変換)
20分
Courtesy: Yuka Tsuruno Gallery, Tokyo
展示風景:「六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声」森美術館、2016年
撮影:永禮 賢
<関連リンク>
・六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声
会期:2016年3月26日(土)-7月10日(日)
・「六本木クロッシング2016展」~アーティスト&作品紹介
(1)毛利悠子
(2)片山真理
(3)石川竜一
(4)後藤靖香
(5)志村信裕
(6)小林エリカ
(7)ジュン・ヤン
(8)長谷川愛