2016年5月31日(火)

英語で開催!
ワークショップ「Dreamflagtory」レポート

2016年4月16日、「MAMコレクション003:スッティー・クッナーウィチャーヤノン―ステレオタイプなタイ」関連パブリックプログラムとして、森美術館では初となる英語によるワークショップを開催しました。国際的に活躍するタイのアーティスト、スッティー・クッナーウィチャーヤノン氏を招いてのワークショップ「Dreamflagtory」の様子を紹介します。

「Dreamflagtory」は、クッナーウィチャーヤノン氏がつくった「dream」「flag」「factory」の3つの言葉を掛け合わせた言葉です。
今回は自分たちが考えるタイ、日本、参加者の出身国(もしくは好きな国)の国旗をイメージして3つの旗を制作し、実際の国旗と新たにデザインした国旗を比べると、どのような違いが見えてくるのかを考察します。この会場でどんな「Dreamflagtory」が展開されたのでしょうか。


「MAMコレクション003」の会場内で行われました。


左に立つのがスッティー・クッナーウィチャーヤノン氏

最初に、本展企画者の近藤健一(森美術館キュレーター)から作家の紹介があり、その後、クッナーウィチャーヤノン氏みずから展示作品の解説を行いました。参加者の皆さんも、クッナーウィチャーヤノン氏から英語で直接話を聞くことで、作品 《ステレオタイプなタイ》(2005)の理解を深めていきます。


フロッタージュのお手本を見せるクッナーウィチャーヤノン氏。


作品に座ってフロッタージュを体験しています。

《ステレオタイプなタイ》は普段は触ることができない作品です。今回のワークショップでは特別に机に座り、中古の学校机の袖部分に彫刻が施された作品に紙を当て色鉛筆でこすり、表面の凸凹が紙に写し取られるフロッタージュも行いました。


フロッタージュを用いて完成した参加者の作品


展示作品を解説するクッナーウィチャーヤノン氏

シリーズ「ステレオタイプなタイ」(2005)、そして《タイ人がグローバリゼーションを恐れない12の理由》(2004)などをクッナーウィチャーヤノン氏が丁寧に解説し、氏の視点によるタイ、タイ人についてを考察しました。その後、タイ国政府観光庁によるタイの日常生活や文化などが発見できる観光プロモーション動画を見て、ステレオタイプなタイのイメージを膨らませていきます。多角的な視点で本作品を考えた後は、いよいよ参加者がそれぞれの国のイメージを具現化して旗をつくります。


旗の色、接着フェルトの色を選びます。


図案をフェルトにうつしてから切り抜きます。


マスキングテープで固定しています。


アイロンで接着します。

考えながら手を動かし、旗づくりを進めていきます。クッナーウィチャーヤノン氏が用意した厚紙(象、円、星、月など)の型を使うほか、自分で型を作ったり、直接フェルトに描いたりと旗の大きさに合わせてアイコンやイメージを配置します。納得がいく配置ができたら、アイロンで図案を接着固定し完成です。


自分が作った旗について発表します。

完成後には、発表を行いました。日本の国旗については桜などの四季を感じる旗や、地形をデザインした旗、平和を願う旗、タイについては、象や自然というイメージを象徴的に使った旗など。考えた国のイメージを、色彩やアイコンをうまく使って表現していて、作った人の想いが伝わってきます。

今回、新たな試みとして本プログラムを英語にて開催したのには、二つの狙いがありました。一つ目は、アーティストであるクッナーウィチャーヤノン氏との直接の会話、やりとりを通して、アーティストと等身大で関わる特別な体験をしてもらうこと。二つ目は、国際的な共通言語である英語を使用することによって様々なバックグランドを持つ参加者とタイ、日本、出身国について多角的に考え、学ぶ場とすることでした。
森美術館のプログラムとして、トークやシンポジウムに日英同時通訳等を入れるだけでなく、ワークショップをすべて英語で行うという実験的な試みの結果、初めて森美術館のワークショップに参加された方も多く、参加者は日本をはじめ、中国、タイ、アメリカ、インドなどインターナショナルで幅広い年齢層の方が集まりました。参加者からは、長い時間をアーティストと一緒に過ごすことで作品の見方が変わり、意見交換できたことが有意義であったという感想を多くいただきました。


最後に集合写真。クッナーウィチャーヤノン氏の人柄が伝わってくるとても穏やかな雰囲気の中で行われたワークショップでした。

現在、展示室にてこのワークショップの様子を上映しています。
参加者の皆さんが作った旗も一部展示されていますので、ぜひ来館してご鑑賞ください。

文:横山佳世子(森美術館パブリックプログラム コーディネーター)
撮影:御厨慎一郎
 

<関連リンク>

MAMコレクション003:スッティー・クッナーウィチャーヤノン―ステレオタイプなタイ
会期:2016年3月26日(土)-7月10日(日)

カテゴリー:13.MAMプロジェクト
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