シリーズ第5回めの開催となる森美術館の「六本木クロッシング2016展」。国内外で活躍する20組のアーティストを紹介していますが、全8回にわたってその作品の一部を解説します。第1回めは、毛利悠子《From A》を取り上げます。
固有の役割を終えたモノを素材にして、それらに風、光、電気などの作用を加え、動きや音を生じさせるインスタレーションを数多く制作してきた毛利悠子は、「日産アートアワード2015」でグランプリを受賞するなど、その活動が注目されています。
《From A》(2015-2016)は、タイトルから日本の有名なアルバイト雑誌を連想させますが、実際は毛利が昨年の2015年にニューヨークに滞在していた時に、「A」という金属製看板の文字の一部を拾ったことから着想されたそうです。Aはアルファベットの最初の文字であり、「アルケー(万物の根源)」にもつながります。ジャンクから生み出されるエラーや揺らぎを含んだ自律的運動体は、モノとそこから生じる相関関係に焦点を当てて世界の成り立ちを捉えようとする、毛利の視点の反映と言えるかもしれません。
《From A》
2015-2016年
看板、パネル、スプーン、モーター、フライパン、ベル、鏡、方位磁石、トライアングル、ボビン、カウンター、木材、扇風機、鉄道模型、楽譜クリップ、ケーブル、ワイヤー、毛ばたき、電球、リボン、電子基板など
500 × 300 × 80 cm
展示風景:「六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声」森美術館、2016年
撮影:永禮 賢
<関連リンク>
・六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声
会期:2016年3月26日(土)-7月10日(日)
・「六本木クロッシング2016展」~アーティスト&作品紹介
(1)毛利悠子
(2)片山真理
(3)石川竜一
(4)後藤靖香
(5)志村信裕
(6)小林エリカ
(7)ジュン・ヤン
(8)長谷川愛