レム・コールハース+ハンス・ウルリッヒ・オブリスト共著
『Project Japan: Metabolism Talks・・・』(英語版)出版記念 スペシャル・トーク風景
写真:御厨慎一郎
「メタボリズムの未来都市展:戦後日本・今甦る復興の夢とビジョン」のシンポジウムのために、来日したレム・コールハースを迎えて、森美術館館長の南條史生とのクロストーク形式で行ったTSUTAYA TOKYO ROPPONGIでのスペシャル・トークイベント。
今回、Tokyo Art Beatが森美術館公式ブログでそのイベントの様子を5回にわたってお届けします。イベントの司会を務めたTokyo Art Beatライター松山直希さんによるレポートをどうぞお楽しみください。
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森美術館での「メタボリズムの未来都市展:戦後日本・今甦る復興の夢とビジョン」と時期を同じくして、現代を代表する建築家レム・コールハース氏が、メタボリズムについての書籍『Project Japan』(英語)を10月28日に刊行する。
森美術館で開催されたシンポジウム前日の9月17日には、来日中のコールハース氏と、森美術館館長の南條史生氏が『Project Japan』世界先行発売を記念して、TSUTAYA TOKYO ROPPONGIにてトークイベントを行った。筆者はそのイベントに司会として参加した。その内容を中心に、なぜ今日メタボリズムに目が向けられているのかを紐解いていきたい。
西洋が主導権を支配的に握っていた建築界で、初めて東洋から生じた建築の前衛運動。それが、『Project Japan』が捉えるメタボリズムだ。1959年、当時まだ若手建築家だった黒川紀章や菊竹清訓らを中心に日本で発足した。高度経済成長を背景に、それに伴う日本の人口急増と都市の膨張という切迫した問題に、「メタボリズム=新陳代謝」の名が示唆するように、有機的に変化し続ける大規模な建築や抜本的な都市計画案を提案することで「メタボリスト」たちは応えていった。1970年の大阪万国博覧会の会場・建築計画に携わったことが象徴するように、その影響は建築界の範疇を超え、日本の国家像、未来像の形成にまで及ぶものだった。
"「メタボリズムの未来都市展:戦後日本・今甦る復興の夢とビジョン」展示風景"
撮影:渡邉 修
コールハース氏は、 建築理論に突出した影響を及ぼし続けてきた数多くの著書を通して、ショッピングモールなどしばしば語るに値しないものとして黙殺されてきた都市の現象を直視し、膨大なリサーチを元にその意義を提示してきた。リサーチの結果、日本のメタボリズムは氏の関心事項として浮かび上がってきた。その関心は、どこからきているのだろうか? なぜ今、メタボリズムなのか?
現在、日本の建築の水準が他のどの国よりも突出して高いというのが、わたしの個人的な意見です。なぜそうなのかと考えると、答えは明快で、グループとしてさまざまな仕事に取り組んだ、才能あふれる建築家たちが実際に存在した、ということに他ならないでしょう。
現代の建築界を見渡すと、際立った人が何人かいますが、彼らがお互いに対話をすることはないどころか、常に競争しあっていて、建築界にコミュニティ的なものがあるとは微塵も感じられません。
さらに、文化における主導権が今は、西洋からアジアに移っているのは紛れも無い事実でしょう。 そのため、西洋建築のヘゲモニーの終焉に積極的に加担したメタボリストたちが、実際どのようにしてそういうポジションをつかむことができたのかを調べてみることは非常に興味深いことだと思います。
<関連リンク>
・レム・コールハース×南條史生
第1回 なぜ、今メタボリズムなのか?
現代から、メタボリストたちの時代を振り返る
第2回 なぜ、今メタボリズムなのか?
サスティナブル社会の実現へ向かう現代―縮小に向かう日本にとって、メタボリズムは過去のものか?
第3回 メタボリズムと政治
真のアーキテクトは、政治家・官僚? 現在の日本で何ができるのか
第4回 建築の現在とその問題
コールハースは〈建築の限界〉を感じているのか
第5回 建築の現在とその問題
政治と建築家が恊働した時代から、 「わたしたちの未来都市」を考える
・「メタボリズムの未来都市展:戦後日本・今甦る復興の夢とビジョン」
会期:2011年9月17日(土)~2012年1月15日(日)
・レム・コールハース+ハンス・ウルリッヒ・オブリスト共著
『Project Japan: Metabolism Talks・・・』(英語版)
出版記念 スペシャル・トーク開催