森美術館「六本木クロッシング2016展」のアーティスト&作品を紹介している本ブログ連載。第6回めに登場するのは、著作と美術制作活動を行う小林エリカです。
《彼女のポートレート》
2015年
鉛筆、コットンペーパー
21.6 × 21.6 cm
時間、記憶、放射能など、目に見えないものをテーマに著作と美術制作活動を行う小林エリカは、小説『マダム・キュリーと朝食を』で2014年の三島由紀夫賞および芥川賞候補に選出されています。
インスタレーション《日出ずる》(2016)は、広島と長崎への原爆投下、その前にアメリカで行われたトリニティ核実験、その時にラジオで流れていたという曲「サンライズ・セレナーデ」、終戦から2年後に生まれた小林の母の存在など、さまざまなイメージが絡み合いながら見る人の連想を促します。暗闇のなかで光る文字に用いられた蓄光シートは、吸収した光のエネルギーを可視光線に変換します。この素材の性質自体が、見えない力を発信しているといえるでしょう。
今を生きる自らの立場から、時間を遡るようにして歴史に光を照射する小林の視点を通して、見落とされていたストーリーが浮かび上がるのです。
展示風景:「六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声」森美術館、2016年
撮影:永禮 賢
<関連リンク>
・六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声
会期:2016年3月26日(土)-7月10日(日)
・「六本木クロッシング2016展」~アーティスト&作品紹介
(1)毛利悠子
(2)片山真理
(3)石川竜一
(4)後藤靖香
(5)志村信裕
(6)小林エリカ
(7)ジュン・ヤン
(8)長谷川愛