世界的に美術館の「黄金時代」とも言われ、都市開発に絡めた美術館の開設が相次いでいます。国立新美術館、サントリー美術館、森美術館の3館で構成する「六本木アー ト・トライアングル」(ATRo=あとろ)も「六本木の再開発には芸術が欠かせない」という認識で、共同のプロモーションなどを行ってきました。今月には、六本木アート・トラ イアングルの3周年を記念して、3館のチーフ・キュレーター などによるトークセッションも開催し、活発な活動を行っています。
今回は、六本木アート・トライアングルのミッションは何か、そして、2009年にスタートした六本木アートナイトの役割は何かについて、森美術館担当者の視点からご紹介いたします。
【多様性を生む、ハイブリッドなアート環境】
少し前まで、団体展、古美術、そして現代美術は、美術館の立地も観客もはっきりと分かれていました。これに対して六本木エリアは 、ハイブリッドなアー ト環境を提供していくことを目指しています。国のレベルで団体展に対応している国立新美術館、古美術を得意とするサントリー美術館、現代美術を中心に扱う森美術館。この近接する3館が協力をすることで、六本木において、観客のシャッフルが生まれ、ジャンルを超えた多様なアートを 楽しんでいただける環境が整ったといえるでしょう。つまり、ルノワールの油絵を堪能し 、江戸時代の浮世絵を鑑賞してから、デミアン・ハーストの作品を眺めることができるなど 、といった具合に、です。
また、3館の展示内容も、既存の枠組みにとらわれない作りになっています。例えば森美術館が最初に開催した展覧会「ハピネス展」では、メインビジュアルに伊藤若冲の作品を起用し、古美術を現代的な視点で解釈しました。
さらに、アートとビジネス、アートと都市開発、官と民、美術とエ ンターテインメントなど、多様な融合が見られるのも六本木の特色といえるでしょう。
【アートで変わる、街の見え方】
今、世界の大型・都市型の美術館は、フランチャイズ化や都市開発の中で拡張に取り組んでいます。「六本木アート・トライアングル」も、首都東京の新たなアートの拠点・六本木の活性化を目指し、恒常的なコラボレーションを続けています。
昨年3月には、東京都と六本木の街の共催により一夜限りのアートの祭典「六本木アートナイト」を開催。一晩で55万人が訪れ、大きな話題となったこのイベントを、今年も3月に開催します。東京に来れば日本のアートの今がわかる「六本木アートナ イト」をフックに、3月の東京の存在をそのように位置づけ、国内のみならず国際的にも認知を高めていきたいと考えています。
「六本木アート・トライアングル」を、東京が世界に誇れるアート の拠点にすること、それが私たちの思いです。
撮影:御厨慎一郎