「MAMコレクション019:視点」は、 森美術館コレクションの中から、春木麻衣子、片山真理、米田知子という3人の女性作家の写真表現に焦点を当てます。
本展は、いわゆる記録媒体としての写真ではなく、鑑賞者が関与することでイメージが完成する写真作品を紹介します。春木麻衣子は、シリーズ作品「either portrait or landscape」において、形式という観点から、また写真と抽象表現の関係性をも主題にとり入れることで、鑑賞者の視点を揺るがし自由にすることを試みています。片山真理は、イメージと鑑賞者の力関係を逆転させ、多様性、規範的価値観、行為の主体という従来の伝統的な概念に挑戦しています。また、米田知子のシリーズ作品「見えるものと見えないもののあいだ」は、表面にあるイメージとその背後にあるナラティブとの相互関係を表現しています。
なお、これらの作品は、2024年にレ・フランシスケーヌ(フランス、ノルマンディー、ドーヴィル)で開催された「浮世:ジャポニスムから日本の現代アートまで」で紹介されたものです。本展は印象派誕生150周年を記念するノルマンディー印象派フェスティバルの一環として同館が森美術館と共同企画したもので、森美術館コレクションから17名の作家による34点の作品を展示しました。印象派は、絵画の革新と強い結びつきを持った運動であると同時に、19世紀に印象派と並行して誕生した写真芸術とも繋がりがあります。人の目に映るものを画像として捉え、保存できるようになったことは、絵画に劇的な影響を及ぼしました。「目に見える真理」というものを提示する写真という新技術の登場は、何かを表現するものとして長い歴史を持つ絵画の領域を根底から揺るがすものでした。この「MAMコレクション」展は、そんな写真表現について現代の視点で再考するものです。
※「浮世:ジャポニスムから日本の現代アートまで」に関する映像をご覧いただけます(英語・フランス語のみ)。